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「卵の緒」~自分の子育てを考えた本~

本を読んでいると子育てのことを考える本に出合うこともたくさんある。
その中でお気に入りの1冊を今日は紹介しようと思う。

最近は 『そして、バトンは渡された』が話題の瀬尾まいこさん。もちろんバトンもすごく良かったし愛情があればどんな環境でも育つということを伝えてくれているのは『卵の緒』と通じるものがあるけれど、私は卵の緒の母さんがやっぱり好き。


文庫で薄めで、本が苦手な人にも手に取りやすいと思う。

『卵の緒』瀬尾まいこ著

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瀬尾まいこさんの本の中の登場人物は、みんないい人だ。
だから、読後感がいいのだろう。
優しい気持ちになれる。
瀬尾さんは国語の教師だったのだが、やっぱり教え子が読むかも?とか考えているのかしら?
なんてことは置いといて。


これ、彼女のデビュー作である。

でも、すごい。

捨て子だと思っている育夫くんと、ちょっと異質だけど愛情あふれる母さんの物語。

母さんの、あまりにストレートな話し方と、日々変わらぬ愛情の注ぎ方に少し驚くけれど、爽やかな風が吹いているような清々しさを感じる。
私にはない、と思う。

出会ったのは娘が中学生のとき。
瀬尾まいこさんは次女が好きな作家さんだったので、ほとんどの本が我が家には揃っていた。そんな中で装丁が可愛らしくて何気なく手にした本だった。

短編で、テンポもよくてあっというまに読めてしまった。

しかし、
私は日々の何気ない生活の中でどれだけ子どもへ自分の愛情を伝えることが出来ているのだろうと考えさせられる内容だった。
「我が子」へ注ぐ愛情表現。
子どもが小さいうちに出会いたかったなと思った1冊でもある。

人と人とがふとしたことで繋がり共に過ごし結びついていく。
確固たる愛情を持って。
そして揺らぐことなく「愛している」と声に出し続ける母さん。

最後にあさのあつこさんが解説で書いている内容を
ほんの少しだけ抜粋してみる。

家庭とは、逞しい父と優しい母がいて、我が子にしっかりと愛情を注ぎ、しっかりと躾をする、そんな場所のことらしい(お偉い方々の見識によれば)。
~中略~
「卵の緒」はその対極にある。
模範にもならないし、真似もできない。こうあるべき理想像もない。他者から押しつけられた枠組みもない。
あるのは「好きだ」という気持ちだけ。


我が家には、幼いころから逞しい父はなく、いるのは厳しい母のみ。
お偉い方々の、この家庭の定義からすると、我が家は家庭ではないということになる。

しっかりとした躾は……思っていても、思うようにはならないものだ。
でも「好き」という気持ちのもと、何とか子供は育った。どうだ、どんなかたちでも家庭は築いていけるのだ。なんてことを言ってみたくもなる。

この母さんのように、あんなにストレートな表現は私にはなかなか言えなかったけれども。

そう、子育てなんて何が正解かなんてわからないし、真似したってそれが自分に当てはまるとは限らない。

たとえ ぶつかることがあったとしても、好き好きオーラだけは出し続ける。
子育てには、それが一番大切なのだと、教えてくれる一冊。

※ ※ ※ ※ ※

瀬尾まいこさんの本はどれもお勧めです。
新刊「傑作はまだ」も親子(父子)の物語。←これは積読中、これから読みます。


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