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朝井 リョウ / スター

大学時代に同じ映画サークルに所属していた尚吾と絋。一緒に監督した作品が映画祭のグランプリを獲得し、"次世代のスター"として将来を嘱望されていた2人。
尚吾は著名な映画監督に弟子入りし経験を積み、一方で絋はその卓越した撮影・動画編集技術を武器にYouTubeの世界で活躍をし始める。
"映画"という価値基準であれば尚吾の方が成功のレールに乗っているはず。だけど世間はSNSを起点に一気にバズった絋に注目する。
自分の方が”本流”に乗っているはずだ。そう信じていた尚吾の価値観が揺らぐ。一方で絋も自分が生み出すものが”本物”からかけ離れていく感覚に戸惑いを覚えていく。

受賞歴、再生回数、完成度、受け手の反応──プロとアマチュアの境界線なき今、世界を測る物差しを探る傑作長編。

巻末あらすじより

"価値"の基準、"評価"の基準、"成功"の基準。
そもそも"価値"とは何なのか。
"本物"とは何なのか。
SNS以前/以後で大きく変わったこの世界の捉え方を、天才朝井リョウが一気に斬り込む。

確かに、もうテレビや映画だけが全ての世界では無くなってしまった。
YouTubeにも、InstagramにもTwitterにも、それぞれの世界に”スター”がいて、しかも今はSNSのスターの方が影響力を持っていることがある。素性もよく分からない”スター”がつぶやくだけで人が輝き、人が死ぬ。
でも、そういった”スター”に取り上げられて「バズる」ことが成功なのだろうか。それは違うと思う。一方で、バズらなければ誰からも気づかれずに終わってしまう。自分が満足していても、誰からも見てもらえなければそれは成功と言えるのか。

自分の仕事も、より多くの人に見てもらいたいし知ってもらいたいと思う気持ちもあれば、分かる人だけに伝わり評価してもらえばよいと思う気持ちが交錯するときがある。
そういった複雑な思いが、本作を読んでスッキリとした気がする。
視界が開けるようなラストは秀逸だった。さすがはオレ達の朝井リョウ。

ただ個人的には、もう少し突き落とされたりぶちのめされる感覚が欲しかったかなと。
まぁ何にしても素晴らしい作品でした。

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