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骨盤帯のアライメント評価

骨盤帯は仙骨と左右の寛骨によって構成され、単に前傾・後傾だけでなく内外旋や傾斜・下方回旋などさまざまなアライメントを見せる。

今回は骨盤帯のアライメント評価とその周囲の筋や関節の振る舞いについてまとめていく。


骨盤帯

寛骨

寛前傾・後傾
対象者を背臥位にしてASISの頭尾側方向の高さを比較する。頭側にあれば後傾、尾側にあれば前傾である。腹臥位でPSISをみてもOK。
動的な寛骨アライメントを見たい場合はジレットテスト等を用いる。立位で片脚立位+対側股関節屈曲を行う場合、股関節屈曲と同時に同側の寛骨後傾が生じやすい。

左右の寛骨による前後傾が生じると、仙腸関節面に剪断ストレスが加わり、周囲靭帯にストレスが生じる可能性がある。

また福井によると、骨盤前傾時の大腿直筋は膝関節方向へ、ハムストリングスは骨盤方向へ移動する。逆に骨盤後傾時は大腿直筋は骨盤方向へ、ハムストリングスは膝関節方向へ移動する。その結果、膝蓋骨高位が高い方は骨盤後傾側である。


前傾では大腿直筋や大腿筋膜張筋、腸腰筋の柔軟性低下、後傾では中臀筋・大臀筋、ハムストリングスの柔軟性低下が見られる。
それに伴い前傾側の大腿骨は屈曲・内旋位、後傾側は伸展・外旋位をとることが多い。




寛骨内旋・外旋(インフレア・アウトフレア)
対象者を背臥位にして腸骨稜外側端とASISの距離を左右で比較する。2点の幅が広い方が内旋(インフレア)、狭い方が外旋(アウトフレア)である。

内旋では縫工筋や鼠径靭帯など鼠けい部周囲の柔軟性が低下し、外旋では中臀筋や大腿筋膜張筋の柔軟性低下が生じやすい。

また股関節内旋・屈曲90°での内転は寛骨内旋、股関節外旋・屈曲90°での外転は寛骨外旋で代償されることがあり、股関節の可動域制限の結果としての寛骨アライメントである可能性もある。




寛骨下方回旋(前額面)
対象者を腹臥位にして股関節外転位をとり、左右のPSISの距離を確認する。次に股関節を内転させ、PSIS間の距離の変化を確認する。距離が開く場合は寛骨下方回旋アライメント(腸骨稜が外側へ、坐骨結節が内側へ移動)と便宜的に判断する。

寛骨の下方回旋は中臀筋・小臀筋、大腿筋膜張筋、外側広筋の柔軟性低下、仙結節靭帯周囲の柔軟性低下、多裂筋・腹横筋の機能低下が生じることが多い。



仙骨

仙骨前傾・後傾

対象者を腹臥位にし、仙骨の上または下1/3を腹側に押して可動性を評価する。上1/3の可動性が乏しければ仙骨後傾位(起き上がり)、下1/3の可動性が乏しければ仙骨前傾位(うなずき)と便宜的に解釈する。
仙骨前傾位は脊柱起立筋群の柔軟性低下、後傾位は大臀筋、梨状筋、尾骨周囲筋の柔軟性低下が生じやすい。



骨盤

骨盤前傾・後傾(空間内)
対象者を立位にし、側面からASISとPSISの高さを比較する。臨床的にはASISよりもPSISが2横指程度高い状態が正常値であり、これより高ければ前傾、低ければ後傾と判断する。
周囲筋の柔軟性低下は寛骨の前後傾と類似する。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回の記事も見ていただけると嬉しいです。

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参考文献

青木治人,他.スポーツリハビリテーションの臨床.メディカル・サイエンス・インターナショナル.2019

山口光國,入谷誠,他.結果の出せる整形外科理学療法.メジカルビュー社.2009

蒲田和芳.スポーツにおける腰痛予防と動作管理.理学療法ジャーナル,2016:Vol. 50, No. 5:p489-497

Diane Lee.The Pelvic Girdle-骨盤帯-.医歯薬出版.2011

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