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アル・ゴア元米副大統領と考える、気候危機。「食」や日々の生活でできることは? #LeadOnClimate

突然ですが、私たちの日々の行動と「気候変動」の関係性って何だと思いますか?
特に、普段の「食」がどのように気候の問題につながっているのか考えてみたことはあるでしょうか。

スウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリ氏に共鳴するように、全世界で気候変動に対する危機感や対策を求める声が強まっている現在。

9月20日には日本でも20都市以上で気候マーチが行われ、東京だけでも2800人、全国で5000人を超える人々が気候危機に対して声を上げました。(私も参加しました!)

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しかし、若者を中心に問題意識が高まっていても未だに「無関心層」とのギャップを感じたり、もう一歩踏み込んだアクションを起こしたくても問題の規模の大きさに戸惑ったりしている人も多いのではないでしょうか。

そんな人たちが、まさに待ってた!というようなプログラムが、10月2〜3日に日本で初めて開催された「クライメート・リアリティ・リーダーシップ・コミュニティ・トレーニング(Climate Reality Leadership Corps)」です。

クライメート・リアリティとは?

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クライメート・リアリティは、気候危機の問題についての知識を広め、行動を起こし、変化を起こすためにアル・ゴア元米副大統領が始めたプロジェクト。

(アル・ゴア氏の名前を聞いてピンと来なくても、彼の環境ドキュメンタリー映画『不都合な真実』を知っているという人はいるかもしれません。)

プロジェクトの主な取り組みのひとつが、今回東京で開催されたリーダーシップ・コミュニティ・トレーニングです。

企業・NGO・研究者・政府関係者・学生など、気候変動に対してアクションを起こしたい人々があらゆる分野から集まり、2日間のパネルディスカッションやプレゼンテーション、ネットワーキングなどを通して気候危機に対する活動でのリーダーシップを培います。

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会場に集った人数は、800人!なんと、その倍の応募があったそうです。
下は18歳から、上は86歳まで、参加者の平均年齢は38歳。若い人の姿も目立ちました。

この記事はイベントの総レポートではありませんが、SHOCK TUCKのキーテーマである「食」など、いくつかのキーワードに絡めてピンポイントに紹介します。

「グレタ世代」と企業で社会に変化を

2日間で合計6回行われたパネルディスカッションでは、「SDGs」「石炭火力」「再生可能エネルギー」「企業・金融」といった大きなテーマから、「気候危機Q&A」「多様なアプローチによる気候行動」のような深い理解・実践につながるテーマまで幅広く扱われました。

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なかでも「変化をもたらす企業」と題したパネルディスカッションで出てきたのが「Z世代」というキーワード。1996年以降に生まれ、社会・環境問題に強い関心を持つ世代だと言われていますが、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)の末吉竹二郎さんは「グレタ世代」と表現していました。

冒頭でも触れたように、全世界的に活発な気候行動が巻き起こるアクターとなったグレタさん。環境問題意識を高く持つ人が多いというだけでなく、彼女に触発されて次々にアクションを起こしているという点で、確かに私たち世代は「グレタ世代」と呼べるかもしれません。

先月に国連から環境問題に対するアクションを評価され、「UN Champion of the Earth」を受賞した米アウトドアブランド「パタゴニア」で日本支社長を務めた辻井隆行氏は、このZ世代/グレタ世代には「グリーン・ウォッシュが通用しない」と言います。

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グリーン・ウォッシュとは「消費者が企業の環境活動があたかもビジネス活動の一環であったり特定の商品サービスに利益をもたらすと誤解を生じさせるような企業活動」のことですが、現在の若者はそのような"見せかけ"を見破るというのです。

気候危機の深刻度が日に日に増していくなかで、企業の責任は「見せかけではなく、本気で気候行動に取り組むこと」

そして顧客を単なる商売相手の「消費者」としてではなく、「社会を変えるパートナー」ととらえて、共に気候危機対策をすすめることの重要性を訴えました。

「無関心層」にどうやってアプローチする?

今回のトレーニング参加者の半数ほどが企業・NGOに属する人たちでしたが、環境関連の仕事をしていないけれど問題意識を持っている人や、学生や一個人として危機感をおぼている人が参加していました。

そんな参加者からゴア氏や科学者に投げかけられた質問は「一個人として気候危機対策に取り組みたいけど、周囲の人々は無関心。そんな私たちに、何ができる?」というもの。

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ゴアさんは7年間ヴィーガン(=乳製品や卵を含む一切の動物性食品を食べない)であり、家ではLEDの電球を使用し、電気自動車を利用することによって日常生活での環境負荷をできる限り減らしているそうです。

ただ、こういった環境に配慮したライフスタイルを決して他者に押し付けるようなことはしないと言います。

その理由のひとつは、「個人の肩に重荷をのせる」のではなく「社会システムに変革を起こす」ことが気候危機の解決の鍵」だという前提があるから。

また、国立環境研究所の亀山康子氏は「さまざまなセクターの人を巻き込んで、多様な問題をつなげる」ことで意識を高めることができるのではと提案します。

気候危機や地球温暖化というとエネルギー問題(化石燃料→再生可能エネルギーへのシフト)が真っ先に取り上げられますが、その他にもあらゆる問題が絡んでいるので、それぞれのセクターが一緒になって行動する必要があります。「食・農業」もそのひとつですね。

ということは、まず関心を持って自分事してもらうためにも、「無関心層」の人の仕事業界や趣味に関わる気候問題を話題にしてみると最初の一歩になるかもしれません。

食と気候変動のつながりって?

気候危機にはあらゆる問題が絡んでいるといっても、日々の「食べる」行為がどう関係しているんでしょうか?

まず、気候変動の大きな要因のひとつと言われているのが、お肉や乳製品などの動物性食品をたくさん含む食生活。

国連FAOによると、畜産は化石燃料に次いで2番目に多く温室効果ガスを排出しているそうです。特に肉牛・乳牛の飼育による環境負荷が大きく、植物性たんぱく質が豊富な豆類などの栽培と比べると20倍の土地が必要で、20倍の温室効果ガスが排出されるんだとか。

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そして、気候変動は私たちの食べ物を作る農業に大きな影響をもたらします。

トウモロコシ、小麦、米、大豆などの主要穀物の収穫高は、温暖化が1℃進むごとに3〜7パーセント減ってしまうと予測されています

また、大気中のCO2濃度が高いと植物の自然の防御が弱まって、害虫に抵抗できなくなってしまったり、作物中の栄養分が5〜10パーセント減少する可能性があるのだそうです。

た、大変だ!

毎日の「食」からできる気候行動は?

日々の「食」が気候変動に、そして気候変動が日々の「食」にもたらす影響が分かったところで、考えなければいけないのが「食を通して、どんな気候行動(climate action)ができるか?」ということ。

ゴアさんが言うように「個人の肩に重荷をのせる」のではなく「社会システムに変革を起こす」ことが気候危機の解決の鍵だとしても、個人が小さなアクションを起こし続ければその効果は蓄積されるし、周囲の人も影響を受けてアクションを起こすようになれば、大きな変化につながるかもしれません。

というわけで今回はトレーニング会場で環境負荷の低減のために行われていた「食」に関する取り組みを紹介し、それを個人レベルに応用してできることを考えてみます。

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・メニューは100%ベジタリアン。
・食材を調達した農家の一覧を表示。
・コーヒーカップやマドラー、食器、カトラリーは再利用できるもの。
・ペットボトルではなく、グラスで水を提供
・コーヒーはフェアトレード
・できるだけオーガニック地場で採れた野菜・果物・穀物を調達。
・調味料は小袋ではなく、大きな器に入れてムダなごみを出さない
・未使用の食品は地元のフードバンクに寄付。
・それでも出てしまうごみは正しく分別してリサイクル&コンポスト

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環境関連のイベントでもここまで徹底されていること(まさに、"グリーン・ウォッシュ"ではない本気!)は実は少ないように感じるので感銘を受けたのですが、これらのポイントは私たちの日々の食生活に当てはめても実践できるんじゃないでしょうか?

例えば、

・まずは週に1回、ベジタリアン/ヴィーガンの日を作ってみる。
ファーマーズマーケットや直売所で農家さんから直接野菜を買う。
タンブラーやお弁当箱、カトラリーを持ち歩いて外出中の使い捨てを減らす。
・ペットボトルではなく、マイボトルを持ち歩く。
・コーヒーを買うときにフェアトレードのものがあれば選択する。
・できるだけオーガニック地場産、国産の食材を選ぶ。(家庭菜園も!?)
・食品の包装はできるだけ最小限のもの、リサイクルできるものを選ぶ
・食べきれない、使いきれない食材は友達とシェア。
・それでも出てしまうごみは正しく分別してリサイクル&コンポスト

こうやって、できることから、楽しみながら自分の生活を見直してみることも立派なアクションだと思います。

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地球規模の問題だからこそ、協働で取り組む

気候危機」。ここまで大きな問題だと自分事としてとらえにくいし、とらえたところで一個人が行動を起こしてすぐに解決するようなことは正直ありません。

でも、グレタさんのようにたった1人の行動が多くの人を巻き込み、政府や国際組織にまで影響を及ぼした例だってあります。

「遠い問題だから」「自分にできることはないから」と思ってしまわずに、日々の生活でできることを探してみませんか?
SHOCK TUCKでは「食」でできることを提案してみましたが、それ以外にも例えば、気候危機に無関心な友達との会話のなかで話題にすることだって大いに意味のあるアクションだと思います。

この記事を読んで気候危機や食に興味を持った方、より詳しく話を聞いてみたい、アクションを起こしたい方などがいれば、shock.tuck@gmail.comまでぜひお気軽にご連絡ください。クライメート・リアリティとしてプレゼンテーションをしに伺うこともできるので、一緒に考える場をつくりましょう!

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