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秘めた恋 | #青ブラ文学部

この気持ちを誰にも言わず三年が過ぎようとしている。暗々裏に彼女の姿を追い続けてきた。

中学生になったらサッカー部に入部をすると決めていたが、その時はまだ女子サッカー部があることを知らなかった。少年サッカークラブには女子もいたけれど、彼女は他県から引っ越してきているので全く面識はなかった。

校庭が狭いため、男女で曜日を分けて部活動をしているが、金曜日だけは合同練習だ。

彼女のボールを追う姿を見た時に初めて心がぎゅっと痛くなった。

これが好きってことなのか…

彼女のサッカーセンスは抜群で足も速く、体育祭ではリレー選手に三年間選ばれた。
サッカー部の試合は、男女で応援するので一緒に行動できることも密かな楽しみだった。

男子部員よりもサッカーの上手い彼女だから、なんだか引け目を感じていたし、頭もよくてかわいい彼女はとにかくモテていた。
それもあって思いは伝えられないまま卒業の日を迎えた。

彼女はサッカーと学力で推薦をもらい、進学校へ進むことになり、今日でお別れだ。
中学校との別れ、同級生との別れ、それよりなにより彼女との別れの辛さが心の中の9割を占めている。

卒業式典後、人気者の彼女には人だかりができていて、とても近づいて挨拶をできる状態でなかったから、少し離れたところでクラスメイトやサッカー部の友人と話をしていた。

「おい」

喋っていた友人に肩を揺すられて、ふっと横を見ると彼女が立っていた。

「何泣きそうな顔してるの?」

「なんだよ」

「あのさ…第2ボタンをください」

「え?!」

暗々裏の恋は終わりを迎えようとしていた。


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山根あきらさん
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