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カナダで保育:子どもの言語発達とバイリンガル教育

今日はバンクーバー中央図書館で開かれたワークショップに参加してきました。

色々な園から保育士たちが集まって、一緒に講演を聞き、フェルトストーリーを作り、図書館の有効活用法を教えてもらったりなど丸々一日を使ってのワークショップでしたが、沢山の事を学ぶ事が出来ました。

そしてその中で「子どもの言語発達について」の項目が興味深かったのでシェアしたいと思います。


カナダは公用語が英語とフランス語となっていますが、基本的にはほぼ英語で通じます。

(カナダでのフランス語は日本での英語教育のような位置にいる感じだと思います。)


今日のワークショップでは、まず最初に2~3歳の子どもがどのくらいのペースで英語を獲得していくか、語数はどのくらいか、そしてその手助けをどうするのかという事から始まりました。

いくつかに分かれていたのですが、それらを要約すると

1.子どもと話したり一緒に遊ぶ時は顔を見て
2.待ち時間を持つ
3.繰り返し&付け加える
4.短い確かめの言葉で返す

という5つでした。


1.子どもと話したり一緒に遊ぶ時は顔を見て
子どもに本を読み聞かせたりする時に膝の上に子どもが座って一緒に読むのもいいけれど、やはり顔を見ながら子どもの目がどこを追っているのかというのがわかる方がいい、という事。

2.待ち時間を持つ
子どもに何かを問いかけたり子どもが何かを言おうとしている時はとにかく待つ。大人相手では少し気まずく感じる事もある無言タイムですが、子どもは言葉を飲み込み咀嚼し取り込んで言葉にするための時間が必要なので、すぐに言うよう急かしたりせずに待つのはとても大切。

3.繰り返し&付け加える
子どもが言った言葉を繰り返したり、その言葉に追加情報を加えて返す。例えば「犬」と子どもが言ったら「そうだね、黒くて大きな犬だね」という感じでその言葉を肯定して、更に詳しく言葉を付け加える事でボキャブラリーが増えるチャンスにするわけですね。

4.短い確かめの言葉で返す
例えば子どもに何かおもちゃを見せた時に「これは何でしょう?」というような質問をするのではなく、そのものズバリの名前を言ったり、アクションを加えたり、質問をするにしても選択式にするなど無理に子どもから新しい言葉を言わそうとするのではなく、確認するような言葉かけをしていく。

5.他の子どもとの会話の手助けをする
子ども同士で会話が出来るようそのシチュエーションを作ってみたり、何か子ども同士で話せる切っ掛けを作ったりするという事です。


これらをインストラクターの方が説明している中であった質問で

英語が第2か国語の子どもは年齢によっての取得語数が平均より少ない子が多いけれど、どうすればいいのか

というものがありました。


バンクーバーはカナダの中でも移民の多い街なので、本当に色々な言語にあふれています。

中国語、韓国語、ポルトガル語、タガログ語、スペイン語、そして日本語。

これら以外にも本当に沢山の言語が飛び交っていて、それぞれの言語も地域によって違う事もあるのでそれを数え上げたらいくつあるのか、という感じです。


なのでうちの園にも3分の1くらいは英語が第二か国語の子ども達がいます。

彼ら彼女らは本当に英語取得が保育園の中だけだったとしても大体1~2か月で意思の疎通が出来るようにはなるので、毎回子どもの脳みそと言語取得の速さを羨ましく思っている私なのですが、それでもその語数や言い回しは同じ年の英語のみを話している子ども達とは差があります。

数か月のうちに気にならなくなるくらい話せるようになる子もいれば、もっとかかる子もいるし、その年齢にもよりますが、やはり親御さんたちはその辺を心配されて何度も相談される事もありました。


そこでいつも私が伝えるのは、単純に2つの言語を取り入れている最中に、1つの言語のみを取り入れている子どもとの語数が違うのは当たり前だという事。

そして言語取得にはとにかく動作込みで繰り返し伝えて使う事が一番わかりやすいという事。


保育園で使う言語は保育士も子どもも基本英語のみ、そして大体が動作が伴います。

「Let's go wash your hands(手を洗いに行こう)」
「Let's go outside(お外へ行こう)」
「It's lunch time! Where is your lunch bag?(お昼の時間だよ!お弁道はどこかな?)」
「Would you like to read a book together?(一緒にご本読む?)」

何かに対する呼びかけや質問が基本にあり、それに伴う動作があります。

そうするとその言葉自体が最初はわからなくても、その音(言葉)はこれを示しているという事が繋がっていって、言っている事を理解してくれるようになっていきます。

もちろん英語のみで生活している子どもは色々な音(言葉)を家でも聞いているのでその語数は園でしか英語を聞かない子とは差が出てくるというわけです。

そしてそれらは単純にまだ知らないだけで、それが言語習得に問題があるとなるわけではありません。


なので、そこの見極めは正直難しいところもありますが、年齢によって目安とする言語でのコミュニケーションや語数があって、それを著しく下回っている場合は何か別の理由があるのかもしれないと保護者と連携を取り情報を伝えるのも保育士の仕事です。


この方の質問はそれに基づいてのもので、バイリンガルの子どもがあまり話さない、語数や言い回しがその年齢の子どもより少ないけれど、それがバイリンガルだからなのか何か他の理由があるかの境をどう見極めればいいのか、という事でした。


そしてインストラクターの方の答えはまさに私がいつも保護者の方にお話ししている事と同じで、先ずは↑で言ったように語数などが平均よりも少ないのは当然の事。

でも心配であるなら専門家の意見を聞くのが良いという事でした。

何か子どもの成長発達に関して心配があれば、少しでも早く専門家の意見を聞くのが一番だと私も思っています。

私は今まで何百人となる子どもを見てきましたが、それでも1人1人違って、そのユニークさも似通った事も沢山知ってはいます。

でも医者でもそれらの専門家でもありません。

カナダでは医者に診せる事にお金もかかりませんし、万が一何か専門家の指導を受けた方がいいという結果になっても、早ければ早い分だけ政府からの補助が出ますし、子どもの為にも早い対応に越したことはありません。

心情的に専門家に診せるまでもない、私の子どもは大丈夫、と乗り気でない保護者の方たちもいます。

そして決してそれらを無視して強制させることは出来ません。


ただ今回のこのトピックで、言葉というのは人と人とが関わってコミュニケーションを取る為に必要不可欠なツールであり、それを欠いてしまうのは子どもの今後に大きなチャレンジとなります。

母国語ではない言語の国で暮らしていると、特にその事を強く思います。


だからこそ子ども達への言語発達の手助けの重要さ、そしてバイリンガルとなる事での可能性の広がりを改めて考える事が出来たワークショップでした。



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