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UXデザイナーが「照明デザイン」の本を読む

前回の投稿以降(ずいぶんと前ですが)、建築関係の本にはまっています。最近よかったのは、面出薫さん著の「建築照明の作法」という本です。

面出薫さんは、日本で最も著名な照明デザイナー。東京駅や京都駅、六本木ヒルズ、東京国際フォーラムなど、数々の照明デザインを手がけています。

私が面出さんのことを知ったのは、21_21 design sightで開催されているマル秘展でした。

東京駅の模型と照明のモックアップを目にして、大好きな東京駅は優れた「照明デザイン」によって美しさを帯びていたことを知りました。しかも、そのデザイン過程では満ち欠けによって変化する月明かりの影響まで加味されているとのことで、大変感銘を受けました。

今回読んだ本では、面出さんが、大事にしている10の思想と27の作法について、語っています。

10の思想を簡単にまとめると、こんな感じ。

1. 光は素材である
スチールやコンクリートと同様に、光も素材であり、スパイスではない。建築にとって重要な要素であり、念入りに考えるべき対象である。
2. 照明器具は道具である
照明器具は光の性能を左右する重要な道具であり、技術によって進化させるべきものである。
3. 輝くべきものは建築であり人である
光は照明器具を輝かせるのではなく、主役の建築や人を輝かせるべきである。
4. 自然界のルールに学ぶ
照明デザインは、自然光には及ばない。1日の間で変化があること、場所によって陰影があることは、照明デザインによっても実現されるべきである。
5. 光は時を視覚化する
光をデザインすることは時をデザインすることである。
6. 空間の機能が光を選択する
光は、空間の機能を紐解きながら設計されるべきであり、その空間を利用する人の喜びや利益に基づく論理で考えられるべきである。
7. 光は機能を超えて気配を作る
人間の生理的な機能だけでなく、心理的な機能にも対応するものが建築照明の真骨頂。「気配」の実現が最終目的である。
8. 場の連続性にこそドラマが生まれる
時の流れ、連続的な行為の中で光は体験されるので、連続的なシナリオを考え、快適性を追求するべきである。
9. 光は常にエコロジカルである
光の影響力は多大なため、生活環境との調和はなくてはならないものである。
10. 光=陰影をデザインする
光にずっと目はあてられない。陰影にこそ心地よさが感じられる。闇から出発し、闇の中に光を置き、残された部分の陰影を重ねていくことで、デザインを行う。

照明デザインという今まで知らなかった分野の文脈の内容ながら、一つ一つ頷きながら読んでしまいました。「心地良さ」を追求する上での、普遍的なデザイン哲学のように思えます。

人が自然に行う動作に、逆らわないこと。
移ろいゆく時や関係性に応じて、柔軟に変化すること。
一連の体験の中に、ほどよく緩急があること。
機能的だけでなく感性的であるが、趣向が見え透きすぎないこと。

UXデザイナーとして、こんなことを意識しながら「心地良いデザイン」をしていきたい。そう思わせられました。

引き続き、建築・空間分野の本に手を出していこうと思っています。

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