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親は急に《親になるわけではない》 ~閑話 独り言

子供が生まれ、少しの間は飲ませる、抱っこ、おむつかえ、散歩という世話でもよかったですね。

だんだん、言葉が出てきょうだいも増えていく。子供は本当に幼いうちから親のことをみています。
雰囲気をかぎとります。私の子供達もそうでした。

ほかのきょうだいと比べたくない。だけど、どうしてよいかわからなくなる...。

以前、秋に別の場所で書いたコラム、詩を綴ります。

   ・・・ ・・・ ・・・

【夕暮れに飛ぶ鳥の群れ】

日が沈んでいく時間が短くなった
昔、こどもと行った低い山
そこに出かけた時は
まだ夕暮れ時ではなかった気がする

歩いて20分ほどのところにある低い山
昇るというより、《行く》という感覚の
そんな山がいくつかあった地域

2人だけですごす時間が持てなくて
彼がぼんやり背中をまるめてテレビをみてる
やるせない思いだった
少し疲れていたけれど
声をかけるとぱっと顔が明るくなった

嬉しそうに上着を羽織り
靴をはいて
手をつないで歩いてく

山では服が汚れるのもかまわずに
落ちてる葉っぱや松ぼっくり、どんぐりを拾って
ビニール袋に入れていっぱいになっても

「もっとひろいたい」
「待っててね、ママ」

私も一緒に拾っていたけれど
彼が拾うのをみるのが楽しく嬉しかった
みる、というよりも、彼と向き合う時間が少なくて

もっと同じ時間を過ごしたいって
君の姿をみさせてほしいって
君がどんな顔で拾うのか
君は何を考えてるのか
君は何が好き、どんな色が好きなのか
もっともっと私は知りたかった

面白い形をした石があると
「ママー!」
大きな声で教えてくれたり
黙々と真剣な顔で土を触る


小さなころは甘えん坊で
いつも「だっこ」
君が一番夜泣きが多かったね
だのに、だんだん我慢するのを覚えていくばかり

障がいを持つ、きょうだいがいるから
きょうだいが多いから

私は君に淋しい思いをさせていた
それでも君は弟のことを助けてて
私の代わりに障がいの子に声をかけて

もう帰る時間だと教えるように鳥が鳴き
君は空を指さして
鳥の群れだと私にささやいた
「先頭の大きいのはママ、後ろは、こどもたちだね」
まるで私たちのことを言ってるように

暗くなってきて山をおり
歩いてると商店街の小さな店
「内緒よ」
と、2人でお団子を食べたんだった

小学校を通る時
校庭の鉄棒で逆上がりを見てほしいと
「ほら、見て、ママ!」

何度も何度もめがまわるくらい
頑張ってくれた
私が笑いかけると君は息を切らしながら

休みなくグルングルン
落ちて尻もちつかないかってくらいに
君は繰り返した

逆上がりが出来る自分を褒めてもらいたかったんだろうね
だけど、私が君ともっと向き合う時間を求めていたのよね

「ありがとう。疲れたでしょ」
鉄棒からおりる時に手伝うと
頬を紅潮させて私に抱きついた
「疲れたぁ~」と言いながら 

あの時、夕暮れの時間を過ごして気づかされた
もしも世界中の誰もが君の敵になったとしても
私は何もきかないで君の味方をするんだって
いつまでも愛するんだ、見守るんだってね

大きくなった今は
遠くにいる今は
心の糸電話で声をかけてるわ

親は子供に育てられる
急に《親にはなれない》
失敗したら子供に謝って
やり直せばいい

そんなことを教えてくれた
ありがとう、教えてくれて

長い時間をすごすことはない
どこか特別な場所に行くことも
旅行をたくさんすることもない

朝、子供の顔を見て私から挨拶し
肩に手を触れて
「いってらっしゃい」と送り出す

夜寝る前に本を読み
ほおとほおを合わせると早く眠りについた

そんな日常の小さなことの繰り返し
それでもいいんだって

《ぼくをみて》のシグナルを発信してくれると
私は嬉しかった
罪悪感を感じることはない、とも思えた
君が気づかせてくれたんだ


夕暮れの茜色と藍色が融合した美しい空に
鳥の群れをみた時には
今でも君のことを思い出すんだよ、
「私のドングリ坊や」


(重複投稿)

読んでいただき、ありがとうございました。 心理職以外の仕事の1つとして、DV被害で困ってる方々に情報提供をしています。そちらへの支援に使わせて戴きますね。