黄色いアイツ、名前なんだっけ?
「あの、あれ、あの人、あのー・・・あー!名前なんだっけー?」
我が家では日常茶飯事のこの台詞。60代の母は、人の顔が浮かんでも名前が出てこないなんてことが往々にしてある。
母に限らず、僕もそんなことはしょっちゅうだ。なんなら小学生の頃にもあった。
小学4年生くらいのときのこと。
当時観ていたアニメの一つが「キョロちゃん」。
そう、森永チョコボールでお馴染みの彼だ。
パルムの件もあったので念のため言っておくが、僕は森永の回し者ではない。
このアニメには主要キャラクターがほかに3体登場する。
まず、「クレヨンしんちゃん」でいうところの風間くん的な男の子「パチクリくん」。
続いて、ネネちゃんの立ち位置にある紅一点キャラ「クリンちゃん」。
そして、黄色い彼。えっと・・・
名前なんだっけ?
うわー思い出せねぇ!
小4のアルロン少年は、その若き脳をもってしても彼の名前を思い出すことができなかった。一緒に観ていた2コ上の姉も「あれー?なんだったっけー?」と頭を捻らせる。
あーなんだっけなんだっけ。マサオくんともボーちゃんとも違う微妙なポジションのアイツ。子どものくせにインテリぶってるアイツ。
名前なんだっけ!?!?!?!?!?
当時はスマホなど存在しない。携帯電話もほとんど普及していないし、していたとしても庶民の小学生に与えられる時代じゃなかった。パソコンも然り。
したがって、調べる手段はゼロに等しい。
友達に聞いてみるか?いや待て、それは危険だ。「うっわお前キョロちゃんなんて観てんの?だっせー」と一蹴される未来が見える。加えて、その後しばらくはキョロちゃんを観てることでイジられるに違いない。キョロちゃんは名作アニメ(内容ほとんど忘れたけど)だが、当時の小学校高学年には少々幼稚に映ってしまっている可能性がある。友達に聞くのはやめておこう。
ならば、自力で思い出すしかない。しかし、なんの手がかりもないのだ。このままだと名もなきファラオとして崇めるほかなくなってしまう。でもなぁ、ファラオにも「アテム」っていう名前があるしなぁ。どちらにせよ「闇遊戯」って呼べば済むし。あーアイツの名前なんだっけ!
万事休す。我々はこの悩みをだれにも打ち明けられず、悶々としながら毎日を過ごすしかなかった。
そんな長きに渡る苦悩も、ある日終わりを告げた。
なにがきっかけかは覚えていないが、ふと頭に彼の名前が降りてきたのだ。
思い出したー!
「ミッケンくん」だーーーーー!!!!!
我々姉弟は手を取り、喜びを分かち合った。
名前が思い出せず辛酸を嘗めた日々。しかしそれが糧となり、あるとき天から授かった名前。忘却の彼方にあったその名は「ミッケンくん」であった。
あー!スッキリしたー!そうだそうだ「ミッケンくん」だー。
いやーコイツには長いこと苦しめられたぜ、まったく。それにしても、眉間にしわ寄っててガラ悪いなコイツ。なんかガン飛ばしてるみたいだ。おお?やんのか?おお?
・・・「ミッケン=眉間」ってコト!?
どうやら「キョロちゃん」の登場人物は、目やその周辺に関する言葉から着想を得ているらしい(最近知った)。
キョロちゃん:キョロキョロする
パチクリくん:おめめぱちくり
クリンちゃん:まつ毛がクリン
ミッケンくん:眉間
マツゲール博士:まつ毛
マスカーラ:マスカラ
グリグリ警部:目をグリグリする
ということか。へぇーなるほど。
昔は知らなかったことが20年以上経った今になってわかると、得も言われぬ快感がある。知識の部屋が広くなったような感じ。ある意味、視野が広くなったということなのかもしれない。そう考えると、知の探究って面白いなぁ。
だが、この話で最も恐ろしいのは「若い頃は割とすぐに思い出せたことも今は全然思い出せないこと」だと、僕は肝に銘じなくてはならない。
なんと アルロンが おきあがり サポートを してほしそうに こちらをみている! サポートを してあげますか?