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ガールフレンド・イズ・ベター/トーキング・ヘッズ Girlfriend Is Better / Talking Heads

1984年、TEACというメーカーからPORTA ONEというマルチトラックレコーダーが発売された。
マルチトラックレコーダーとは音を重ねて多重録音できる音響機器で、レコーディング用のプロ機器は存在していたが、趣味レベルの物は無かった。
録音する媒体はカセットテープだった。
この後、MDやCD、ハードディスクへと録音媒体が進化し、パソコンでの録音に変遷していく。
この製品の前にPORTA STUDIO244という名機が発売されていて欲しくてたまらなかったが、値段が198000円もしたのでとても手が出なかった。
そこにきてこのPORTA ONEは初めて100000円を切ったのだ。
これは迷わず買いだ。
当時どうやってお金の工面をしたのか覚えていないが、とにかく買った。
ローンを組んだのかな?

うおおおおおおおおおおおおっ!
使ってみたら面白いなんてもんじゃない。
どこかからリズムマシン付きのキーボードを借りてきて多重録音しまくった。

同郷で同級生「すし職人」のK崎君がすぐ近くに住んでいて、彼はベースプレイヤーだった。
二人で当時聴いていた曲をあれこれ録音して遊んだ。
全部で4トラック使えるのだが、どのトラックに何の音を録音するか、綿密に計画を立てないと録音トラックが足りなくなる。
楽器の音量も考えて左右の音の定位も考えて録音しないと、あとから修正できないのだ。
ピンポン録音というのだが、第1~3トラックに音を録音してそれを1つにまとめて第4トラックに移す時にもう一つ音を追加録音できる。(第4トラックに4つの音が録音されました)
残りの3トラックのうち第1~2トラックに録音して、まとめて第3トラックに移す時にもう一つ音を重ねる。(第3トラックに3つの音)
さらに空いた2トラックのうち第1トラックに録音して、それにもう一つ音を重ねて第2トラックにまとめる。(第2トラックに2つの音)
残り一つ空いた第1トラックに録音する。(第1トラックに1つの音)
そうすると10個の楽器の音を重ねることができるのだ。

どう?
途中で読む気が無くなるぐらい分かりにくいね。
時間を使うのがもったいない話なのでスルーして。
すみません。

上手に音のトラックをまとめれば、ある意味無限に重ねられる。
ただし、当時はデジタルではなくアナログ録音なので音を重ねれば重ねるほど音が劣化してしまう。
ギターを何本入れて、左右にパンして、コーラスは厚くしよう、パーカッションも入れよう、あれも入れようこれも入れよう。
大はしゃぎで録音した。
アパートの壁が薄いのでボーカルは布団をかぶって録音した。
夏場は汗まみれになった。

ガールフレンド・イズ・ベター/トーキング・ヘッズ
バーニング・ダウン・ザ・ハウス/トーキング・ヘッズ
ツイスト・アンド・シャウト/ザ・ビートルズ
スティック・イット/ニック・ロウ
インドア・ファイアー・ワークス/エルビス・コステロ
ディア・プルーデンス/ザ・ビートルズ
マリー・アンヌ/ザ・フ―
ディス・チャーミング・マン/ザ・スミス
などなど。

楽しかったなあ。

追記
この文章は人に見せるつもりもなく3~4年前から少しづつ書き溜めていて、最近noteに載せはじめた。
この文章を書き始めた時には予想もしなかったが、
K崎君は一昨年57歳の若さで鬼籍に入った。
俺を理解してくれる数少ない友人の一人だった。

桜が咲き始めた3月の末。
春が来て、陽の光で世界が明るく輝き始めた頃の訃報だった。
また今年も桜の季節がやって来る。

お前との楽しかった時間はいつまでも忘れないぞ。 


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