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世界の国からこんにちは/三波春夫 Sekai No Kuni Kara Konnichiha / Minami Haruo

「こんにちは~、こんにちは~、世界の国から~」

万博だ!
太陽の塔だ!
月の石だ!
リニアモーターカーだ!
人類の進歩と調和だ!

ついに家族で万博へ行くことになった。
道中は覚えていない。多分寝ていたのだろう。

最初に入ったパビリオンはペプシ館だった。
ショルダーフォン(昔の携帯電話機)のようなものを渡されて耳に当てながらフワフワした床を歩くとボヨンボヨン音がするという、ただそれだけのアトラクションだった。
でもウチの実家の店はコーラとファンタじゃなくてペプシとミリンダ(!)を売っていたので親しみを感じた。

次に入ったのはカナダ館だった。
入ったと言ってもキノコの傘のような大きな屋根のパビリオンを通り抜けるだけで何も面白くない。
何だよこれ。

でも生まれて初めて外国人を見たのはここだ。
田舎には外国人はいなかったからね。

次は丸太を縦に並べて階段状にして上に登れる遊具のようなオブジェのような。
少し登ったけど上の方は段差が1m以上あってビビって途中でやめた。
危ないことこの上ない。
今なら絶対OKが出ないタイプの危険な遊具・オブジェだった。

そして最後にビルマ館の前の池と建物をバックに写真を撮った。

あれ?
アメリカ館は?月の石とか。
ソ連館は?ソユーズとか。
リニアモーターカーが走ってるはずなんだけど。
遊園地のダイダラザウルスってジェットコースターは4種類ぐらいコースがあって…。

見たいパビリオンは何時間も待ちになっていて気が短い父親は全部スルーしたのだった。

おいおい、何だよ、一番いいとこ見てないじゃん。

しかもビルマ館の前でかき氷を買ったのだが、ウチの実家の店も向かいの工場勤めの人を相手にかき氷を売っていて、イチゴやレモンの値段は30円だった。
しかしこの万博のかき氷は150円でシロップも申し訳程度しかかけてなく、途中で薄ーい味の氷水になるような代物だった。
父親は烈火の如く怒って、「高すぎる!ウチは30円だぞ!」かき氷屋の文句を言い続けたのだった。

父親はあまり計画性のない人で、「行けば何とかなるだろう」ぐらいの気持ちで来てしまったのようで宿を取ってなかった。
俺は幼くてぼんやりとしか覚えてないのだが、受付のおばさんと交渉していたらそのおばさんが「子供連れじゃ困ります」みたいなことを言っていた。

多分だけどラブホに泊まったんだろうな(笑)

当時小学1年生だった俺は時々寝小便を垂れていたのでベッドに寝させてもらえず、ソファに寝かされた。

俺の万博の記憶は散々なものだ。

ウチの妻も家族で万博に行ったそうだが、アメリカ館の月の石、ソ連館のソユーズ、太陽の塔の中まで入ったらしい。

くそう。

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