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半端ないさみしさ漂った通常国会|迷想日誌

現在開かれている204回通常国会は6月16日で終了する予定となっています。
労働関係法改正について現時点における状況をご紹介します。
とはいっても、今国会での労働関係の主な提出法案は育児介護休業法改正案のみです。

旧安倍政権で大きく進んだ働き方改革は一旦休止となっています。
今年は厚生労働省が新型コロナウイルス感染症対策に忙殺され、致し方ないかもしれません。
厚生関係の法改正に重点が置かれているのは事実です。

育児介護休業法改正案は「労働新聞」でも報道したとおり、男性の育児休業取得促進に向けた制度改正が柱となっています。
労働者は子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に4週間以内の「出生児育児休業」を取得することができるとしています。
その場合、合計28日を限度として2回に分割することができるというものです。
制度改正の詳しい内容については、法案成立後に「労働新聞」に掲載したいと思います。

ここでは参議院先議となった育児介護休業法改正案に対する附帯決議の内容を概括したいと思います。
改正の趣旨としましては、男性も女性も一定期間職場から離れて育児に専念するということを社会通念上も雇用関係上も当然のものとして定着させること、そして真に男女が共に参画できる社会をめざすとしています。

これによって令和7年における男性の育児休業取得率30%を実現するとしています。
ここで重要なのは事業主に対する支援制度です。
附帯決議では小規模事業者でも出生児育児休業を活用できるよう代替要員確保や雇用環境の整備などの措置に対して支援を行い、事業主の負担に配慮した制度運営を行うこととしている点です。

男性労働者が出生児育児休業を利用するのは良いとしても、代替要員のいない小零細企業では死活問題にもなりかねません。
「労働新聞」社説でも代替要員が確保できる大手企業と異なり、中小零細では要員確保が困難となりかねない点が最大の懸念材料と主張していました。
いくら経費支援しても要員が埋まらない可能性があります。

育児休業取得は労働者の権利であるとはいっても、小零細企業においては事実上一定期間業務が滞り、事業継続が困難となるケースが生じかねません。
厚労省はこの附帯決議に沿って実効性ある要員確保対策を制度化する必要があります。

今国会はコロナ対策中心でしたが、次期通常国会からは再度働き方改革に重心を移すべきです。
労働生産性向上も日本型雇用慣行の見直しも道半ばです。
次期通常国会は新たな政権で運営される可能性が高いと思われますが、働き方改革を軽視すると国民からの支持は得られないことを自覚してもらいたいと思います。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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