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全員で情報を共有し共通課題に取り組む

[要旨]

大阪府にある三和建設では、社員が共有する経営情報として、月次で期末の売上、原価、粗利益、販管費、経常利益の着地目標と着地見通しを一覧表にして、社内の共有サーバーにアップして、全社員に共有しているそうです。それは、一部の者だけが経営に関する重要情報を独占しているより、可能な限り社員に共有されている方が、その組織への信頼が高まるからと社長が考えているからだそうです。

[本文]

前回に引き続き、今回も、三和建設社長の森本尚孝さんのご著書、「人に困らない経営-すごい中小建設会社の理念改革-」を読んで私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、森本さんは、経営者が暗黙の了解を社員の行動に期待するのは間違いであり、ルールや規範などの順守を求めるものは明文化し、何回も繰り返し伝える責任が経営者ある、さらに、ルールがあらかじめ共有されていることは、社員のモチベーション維持の大前提であって、組織を組織たらしめているのは、ルールとそれを守る文化であるということを説明しました。

これに続いて、森本さんは、会社の財務情報は、すべての従業員に共有させることが望ましいということについて述べておられます。「会社や組織が社員から信頼を得るための要素は数多くあるが、情報とルールの共有はとりわけ重要であると思う。一部の者だけが経営に関する重要情報を独占しているより、可能な限り社員に共有されている方が、その組織への信頼が高まるものである。そこで、三和建設では、社員が共有する経営情報として、月次で期末の売上、原価、粗利益、販管費、経常利益の着地目標と着地見通しを一覧表にして、社内の共有サーバーにアップして、全社員に共有している。

会社によっては、財務状況をまったく社員に知らせていないところもあるが、その理由の一つは、知らせる必要性を感じていないからだろう。社員は、目標数値を達成するために、目の前のタスクに集中すればよいのであって、全社レベルのことなど知る必要などないというものだ。もう一つは、知らせることをリスクだと考えていることもあげられる。

しかし、仮に、今期、赤字の危機を抱えていたとして、ありのままの状況をオープンにしないまま、社員に危機感を煽っても、それこそ空振りに終わるだけである。全員が同じ情報を共有して、初めて、同じ課題に取り組むチームが結成される。財務部門にいるわけでもない、一般の社員に、決算書は読めないのではないかという疑問もあるかもしれない。しかし、まずは知らせることが大切なのであり、最初は分からなくても、分かろうとして調べたり、誰かにきいたりすることから、成長が始まる」

私も、事業を組織的に展開しようとする会社は、従業員に財務情報を公開した方がよいと考えています。もちろん、財務情報を公開することのデメリットはありますが、非公開にすることのデメリットもあります。それは、森本さんも触れておられるように、従業員にも、経営者と同様の危機感を持ってもらいたいと思うのであれば、財務情報を共有することが前提です。また、従業員に経営者と同様の視点を持って事業に臨んでもらいたいと考えているのであれば、やはり、財務情報を共有しなければなりません。

本旨とはそれますが、もともと、株式会社は、会社法第440条の規定により、株主総会で決算が承認された後、官報か日刊新聞紙に貸借対照表の要旨を載せるか、インターネットに貸借対照表と損益計算書を掲載することが義務付けられています。これを決算公告といいますが、株式会社の財務情報は、法律では、社外にも公開すべきものと規定されています。また、いずれ、株式を上場させようとまで考えているのであれば、投資家に詳細な財務情報(有価証券報告書)で提供することになります。そうであれば、従業員とも財務情報を共有し、経営者の視点で事業に臨んでもらえる環境を提供する方が望ましいと、私は考えています。

2024/1/30 No.2603

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