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シンプル経営は従業員満足度を高める

[要旨]

あるホームページ制作会社は、顧客の集客支援を行っていましたが、売上を増やそうとして次々に新しいサービスを導入し、経営が複雑化しました。しかし、業績は回復しなかったため、顧客をデイサービスの事業所に絞り込んで、事業をシンプル化したところ、従業員の方の専門性が深まり、そのことが従業員満足度を高め、そして、顧客満足度を高めて業績を回復することにつながりました。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの佐治邦彦さんのご著書、「年商1億社長のためのシンプル経営の極意」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、静岡県浜松市にある居酒屋では、同市に本社がある会社のサラリーマンをペルソナに設定し、「遠州人であることに誇りを感じて遠州自慢ができる店」という顧客体験価値を提供するようにした結果、顧客に価値を感じてもらえるようになり、それが同店の強みになったということを説明しました。

これに続いて、佐治さんは、経営のシンプル化によって、従業員満足度を高めた会社の事例をご紹介しておられます。「IT企業の株式会社ネットアーツの事例です。この会社は、ホームページ制作を軸とした、企業の集客支援やシステム開発による業務改善などを行っていました。しかし、市場の成熟化により業績が悪化し始め、打開策として、新しいサービスを模索していました。例えば、他社との差別化を図るために、最新技術を取り入れようとするものの、思うようにいきませんでした。

売上を上げていくために、新しいサービスを追加したせいで、経営の複雑化が進んでいたのです。そこで、この企業は顧客の絞り込みに舵を切りました。放課後等、デイサービスを運営する事業所向けの施設運営システムに特化することにしました。その結果(中略)、まず、一つの業種に特化したことにより、その業界の問題が深く理解できるようになりました。そして、顧客の立場に立ち、お客様が気づかない問題までも解決するシステム開発とサポート体制の充実を図ることに成功したのです。

また、システム導入を図るうえでの課題も理解し、導入したシステムを現場が使いこなせるようにサポート体制も充実させていきました。このように、顧客を絞り込むことで、顧客満足のための商品やサービスの改善を積極的に行える会社になったのです。それにより、顧客満足も向上し、現場スタッフたちも自信を持って積極的に仕事に取り組むようになりました。

さらに、価格決定権も自社が持てるようになり、生産性も向上していったのです。今では、この会社では、ほとんどの社員が残業しなくなりました。このように、シンプル経営は、顧客の立場に立って深く考える余裕を生み、社員に自信や希望を与えます。それこそが、真の社員満足につながるのです。そして、同時に顧客満足も向上していくのです」

この事例のネットアーツさまのように、従業員の方の専門性を高めてもらい、さらに顧客満足度を高めるという手法は、他の会社で実践しようとしても、一朝一夕では効果が得られるようにはならないということも事実だと思います。しかし、これからの時代は、顧客の高度な要求に応えることができなければ、ライバルとの競争に負ける時代になっていくわけですので、そのためには、従業員の方の専門性を高めてもらうことが必須です。

そして、そういった専門性を高めることは、ネットアーツさまの事例のように、従業員の方の満足度も高まり、それが顧客満足度の向上にもなるという、好循環が生まれることになります。したがって、商品(製品)を絞り込み、事業をシンプルにすることは、従業員満足度を高めるという観点からも効果があり、そのことが競争力を高めることになると言えます。

2024/1/21 No.2594

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