夫の手料理【休職日記】
私たちが四国で暮らしていた頃、夫は工場勤務だった。朝早くに出社して、多少残業があっても17時~18時には退社していた。
・四国での日々
二人とも大阪出身なのに、四国で始まった新婚生活。2LDKの格安アパートが、私たちの城だった。軽量鉄骨だから、お隣さんの声が丸聞こえ…でも毎日の生活が明るく希望に満ちていていた。
私はその頃、持ってる資格と職歴を活かしてパート雇用で公立の小児科に勤めていた(会計年度任用職員ってやつ)。基本は定時上がりで帰宅は早く、必然的に食事当番は先に帰る私だった。
だけど金曜日は、夫の工場はノー残業デー。その日だけは食事当番は交代。
帰宅すると玄関から焼きそばの香ばしい匂いがした。男の手料理といえば、焼きそば、肉を豪快に塩コショウで炒めたやつ、それから大阪のソウルフードお好み焼きなのだ。
・夫の休職
さて、私たちは故郷である関西に戻った。転勤でやっと帰ってこれたのだ。異動先は忙しい部署で、工場のように毎日決まった時間に帰ることはできない。毎日毎日残業で、夫が帰ったらとっくに私は寝ている。のんびりした四国での生活は消え去ってしまった。
そして夫は今、休職をしている。
以前の記事でも書いたけど、パワハラ上司にあたり精神をずたずたにされてしまったのだ。あいつも同じ目に合って会社に行けなくなればいいのに。何度も呪った。
だがパワハラ上司が家に居たところで、嫁や子供に焼そばを振舞う姿は想像できない。あいつはきっと現世では徳を積めず、来世で畜生に生まれ変わるだろう。せいぜい焼きそばの具にでもなればいい。不味いかもしれないが、「もったいないから」と最後まで食べてもらえるかもしれない。昨今の食育に感謝しろ。
・今夜のおかずは?
休職した夫は、今や毎日がノー残業デーだ。ご飯を作れるくらいには、回復しつつある(相変わらず些細なことで拗ねるし、毎日は難しいけど)。ある日、仕事から帰ったらいい香りが玄関まで漂ってきた。
台所でジュージューとフライパンが鳴いている。焼きそばには、オタフクソース。隠し味はオイスターソースが我が家の伝統。新婚生活の頃から変わらない、夫が作る焼きそばだ。陽が完全に落ちるには早く、夕日が台所を照らしている。夫は動画を見ながらのんびりと菜箸でフライパンを掻きまわす。
これが人間らしい健全な生活じゃないのか。
冷蔵庫にはキンキンに冷えた第3ビール。「できたよ~」と夫の声が聞こえる。食べたら犬の散歩にでも出かけようか。だってまだ外は明るい。
焼きそばはちょっとしょっぱくて、涙の味がした。
最後まで読んでくれてありがとうございます。タイトルの焼きそばの絵はiPadで描きました。わりと美味しそうに描けて満足です( ¯﹀¯ )エッヘン
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