詩『還暦』

私は知ることで窮屈になった
何も知らない生まれたときはずっと自由だった

無知な私は世界とひとつであり
そのことに疑いのかけらもなかった

めずらしい話ではない
たぶん誰もがそうだったのでは

だが残念なことに
私は多くのことを知ってしまった

あまつさえ
自由を求めてもっと知ろうとしている

知ったところで
ますます不自由になるだけなのに

せめてこれからは知ることを控えよう
それで困ることもないだろう

そして少しずつ
無知へ向かって歩いてゆこう

いつかはあの
赤ん坊の心へ還れるか

無理だとしても
その道のりは明るく楽しい