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エッセイ

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歴程 35号

歴程 35号

『歴程』の古い号を入手した。1951年2月1日発行の35号。
若い頃に室生犀星や萩原朔太郎の『卓上噴水』、『生理』などの完全復刻版を、最近では恩地孝四郎特集、山村暮鳥特集の『感情』を求めたりはしているが、発刊時のままのオリジナル詩誌というのは初めてである。

歴程と言えば、詩を書く人で知らぬ者はないほど高名で、いまなお続く歴史的な詩誌。1935年5月に、草野心平、中原中也、尾形亀之助、逸見猶吉、岡

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蝸牛山散策

蝸牛山散策

雨に雷、体調も不安定とあって蝸牛山散策は諦めていたが、帰りのバスが行ったばかりで次は一時間余り後。雨も上がったし、ゆるゆるゆるゆる歩くことにして坂を下ればヤクシソウ(薬師草)がいっぱい咲いていた。

蝸牛山に着く頃には風も収まって、麓の原に入り込んでゆっくり過ごす。ウグイスの笹鳴が聞えるくらいで鳥の姿はない。長距離トラックが一台、原の入り口に止まって昼の休憩をとっている。以前も見たから、この山が好

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チャーリー・パーカー生誕日

チャーリー・パーカー生誕日

今日咲いた一輪の花。
今日飛んだ一羽の鳥。
今日開いた一片の心。

陶像は今日が生誕日のチャーリー・パーカー。ひっくり返すと「1984 ま Bird」と刻んである。つれあい(音座マリカ)の初期の作で、焼成は1986年、奥能登で珠洲焼を復興させた中山達磨氏の窯。

久し振りに開いた本(チャーリー・パーカーの伝説)に挟まっていた木の葉。長さ12cm。何の木の葉だろう?
(ページはラジオDJ・司会者のシ

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モンク、絵と詩と

モンク、絵と詩と



 セロニアス・モンクの曲には他にはない得難い魅力でもあるのか、多くのプレイヤーが演奏する。ジャズ以外にもクロノス・カルテットがチャレンジしていたり、ロック畑のアーチスト中心で二枚組のオムニバス・アルバムもあった。演奏心をくすぐって、いざやるとこれがなかなか難しいそうだ。

 同じように、絵を描く者を、モンクの風貌は誘惑する。線や面の素敵な形象がそこにあるからで、それを自分の感覚で試してみたくな

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ダニエル彗星

ダニエル彗星

バスを下りて図書館に寄る。その前にコープの入口に僅かばかりの古本。中に一冊だけ岩波文庫が。五人づれ『五足の靴』。えっ、と思う著者名にも驚くが、こういう場合はえてして買ってしまうもの。代金は箱に入れて下さいと主は留守。ワンコイン落とすと、他に仲間はいないような音がした。

五人づれとは、「明星」主宰・与謝野鉄幹を中心とした、平野萬里、吉井勇、木下杢太郎、北原白秋ら新詩社の面々。このメンバーで1907

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名月盃

名月盃


満月珈琲満月になると、つれあいがコーヒーを淹れて、隣の空地へ出かけます。カップに丸い月を映して楽しみながら飲むというものです。北国の古い友達に教わってから、すっかり満月珈琲のファンになっています。時にはコーヒーの代わりに野草茶だったり、黒豆ジュースだったり。

昨年の名月にも満月珈琲を楽しんでいたので、ではわれも、とむかし絵付けした盃を探し出しました。どうせなら、ふうらにも十五夜を遊んで貰おうと

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月のひと

ふうらかん―月のひと

風の羅漢、旅する羅漢を、墨や陶で表現してきました。
野の旅人だからと、最初は野焼きから。塊に近い作りのものを、コントロールの効かない焼き方をするのは無謀だ、と言われながら試行錯誤。そのうち、友人の窯に入れて貰ったり、野焼きの仲間が暮らす村に薪窯が出来たりして、いろいろな焼き方で、いろいろな<ふうら>が生まれてくるようになりました。

ひとりひとりのふうらには、名前がありませ

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初夢 芭蕉のHTML講座

初夢 芭蕉のHTML講座

 「貘の詩画館」というホームページを開いた年の初夢です。1997年。オープン当初に掲載していた文章ですが、夢と獏のページを休眠させる際に取り下げたままでした。
 いまや、HTMLなど書かなくても、ブログやTwitter、note等々で十分発信出来るようになりました。でもまあ、面白い夢ではあるし、これから何が起こるのか、わくわくしていたのは、昔も今も一緒。あれやこれやと試行錯誤も同じ。原点に帰ってみ

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夢の生活誌

夢の生活誌

  [目次]

  夢を見る惑星
  夢は星雲宇宙
  夢は自己の宝庫
  夢の採集譜
  夢の生活誌

 夢を見る惑星夢を見たことがありますね。

夢はだれもが見ます。

みんな毎日、夢を見ているのです。

考えてごらんなさい。
この惑星で、
同じ時間に、
何億の夢が見られているのです。

一人のひとにかぎっても、
一生の間に、
どれだけの数の夢を見るのでしょう?

かりに、
一日に一つの夢を覚

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投げ銭システムで

投げ銭システムで

 投げ銭方式を採用してみた。
 昔、ひつじ書房の松本功さんが投げ銭システム推進準備委員会というのを起ち上げて、バナーなども用意された。それをわがオンライン図書室にも貼って応援もしていたのだけれど、いまはページに繋がらない、どういう顛末だったのだろうか。

 それから十数年。悩まされた少額決済の道は、いろんな販売サイトが代行し、販路もKindle Store、iBooks Storeのオープンで、大

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文庫草誌

文庫草誌

(2000年前後にホームページで連載していた本にまつわるノートです。投げ銭方式で全文公開します。)

スランプ 本作りにもスランプはある。創作性、即興性の濃い小冊子中心だとなおさら。自作ばかり手がけているせいもあるだろう。そんなときはふらふらと出かけていって、石ころや雲切れを拾い集めて本に編集してみるのも一興。

 

鏡花忌 幽玄院鏡花日彩居士。没後60周年にあたるこの日、青磁選書の『春晝・春晝

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