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34.情熱。

(前回記事「33.」の続きです)

はじめましての社長に怪訝な顔されるという洗礼を受けた僕は、はたして…?

…アイスタイム

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※画像は「アイスエイジ」のものです


凍りついた、場の空気。
はたして、どのように解凍すべきか。。。

想定外の初対面に固まる僕とスタッフさん。
それに対峙する、厳しい顔をした社長。
コトの成り行きを全て把握しているのは、醸造家さんのみ。

…どうすればいいですか、醸造家さんっ!


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沈黙の中にポツリポツリ、醸造家さんが口を開きます。
「ワインとアート」についてとか、2階の活用をどうする、とか。
何とか糸口を見つけ、僕のプレゼンにつなげようとしてくれているのが、見てわかりました。
ガッテンだぜ、醸造家さん!
ちょっとでも突破口が開けば、僕はすぐに突入するつもりです!


…しかし、社長には響いてる様子はまるでなく。
そもそも、この取り組み自体に全然興味がないかのようです。。。

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しょんぼり。


…久保田さんは、ちゃんと「ワインも飲んで」考えてくださってて。

何度目かに醸造家さんが繰り出したこのフォローで、「社長の温度」がちょっと変わったのを僕は感じました。

…どうだった?

おっ!はじめて、社長から質問がきた。

よっしゃ、ここだっ!


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僕は、「ワインを飲んで感じたこと」を、素人感想ながらも必死で伝えました。
決して上手くない感想だったろうし、的も射てなかったかもしれません。
でも。

とにかく、話を聴いてほしかった。会話をしたい。
ただ、その一心。

僕は、何もわかってない「ワイン素人」です。
引き出しなんて、何もありません。
きっと、そんなことは、もうすでに承知されてるはず。
ここで取り繕っても仕方がない。
丸裸で「会話」をしにいってやる。

そんな思いでした。


僕は意を決して、社長に話しかけました。

岩見沢で、ワインを作っているなんて知りませんでした。
ブドウ栽培って、この地域でもできるんですね!


思いきった、本音トークで切り込む。

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社長とのコミュニケーションを成り立たせないと!


…もう無我夢中で、たぶんプレゼンの内容云々は頭になかったと思います。
お客様の立場ならともかく、「プレゼン持ち込む立場」ってことを考えると、一喝されて終わりになりかねないような、完全に無礼な切り込み方ですが、「素人の無知」を武器に、

「何もわかんないので、色々教えてほしいです」

の姿勢で切り込みました。

…というか、もうそれしか武器なかったからんだけど笑



でも結果、それが功を奏した
なぜなら、本来の社長は「温厚でイイ人」だったから。
「仕方ない、教えてやるわ」って、受け止めてもらえたみたい。

首の皮一枚、つながった…!

社長は重たい口を開いて、ポツリポツリと農家時代の話をしはじめました。

元々は、ここはブドウじゃなくて、米を作ってたんだ。
「宝水町」って名前になる、ずっと前からな。
町の名前を決めるってなったときに、皆で「宝水」って決めたんだ。
ここをもっとまっすぐ奥に行くと「宝池」っていうのがあってな、
この地域の水がめなんだ。
あの池があるから、この地域は米が作れる。
「宝池の水の町」っていうことで「宝水」なんだ。

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…正直、ここまでの返しがくるとは思っていませんでした。
思いがけず素敵な話をしていただけて、僕はテンションが上がった。

この町の名前に、皆さんの思いが詰まってるなんて。
誰かに教えてあげたくなるような、すごい素敵な話ですね!

それは、おべっかでも媚びるでもなく、僕の本心でした。

社長は「…そうか?」と言って、はじめて照れ笑いを見せた。


災い転じて。


僕が「宝水ワイナリーらしさ」を探っている中で、ワインの味のまとめ方や印象っていう「具体的な着地点」は見つけることができていたんです。
そして今、社長の話を聞いて、思いがけず「ワイン」の後ろにある部分が見えた。

「ワイン」という「作品」と、
それに至る「宝水」という「思い」や「ストーリー」

「ブランディング」を考えるときには、この「思い」や「ストーリー」っていう背景部分がすごく重要になってくる。

「宝水」という土地で脈々と継がれてきた「思い」という歴史。
その上に、今「ワイナリー」があり、「ワイン」があるということ。
社長が象徴する「思い」の部分と、醸造家さんが表現する「着地点」としてのワインが、ここでつながった気がしたんですね。
この、なかなかの修羅場の最中に、思いがけず。

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社長のお話から、思わずそこのピースがハマり、僕のテンションは一気に上がりました。
何せ、僕が求めていた「宝水ワイナリーらしさ」のストーリーが、社長の話の中に詰まってる。

僕は興味津々で、どんどんと社長の話を聞いていきます。
社長との会話は、どんどん熱を帯び、楽しくなっていきました。
自分の話を食い入るように聞いてくれたら、社長も気持ちいいよね^^

気づけば社長は、笑顔で話をしてくれるようになっていました。

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さて、宴もタケナワ。

結局プレゼンこそできなかったけど、僕的にはそれよりも、「イイ話を聞くことができた充足感」を感じていました。

登場時とすっかり表情の変わった社長に、僕は最後にお伝えしました。

素敵なお話をたくさん聞ききできて、とても嬉しかったです。
こちらのワイナリーが益々素敵なところだと感じました。

お話をお聞きして、僕はそれをたくさんの人に伝えたいと思いましたし、聞いたら皆さん、「素敵だ」って思うと思うんですよ。
今日の僕が、そうだったように。
でも、
それがワイナリーにとって「必要ない」ことなのであれば、無理にやりましょうとは言いません。
もし、「必要だ」と思われるのであれば、その時は僕にできることを精一杯頑張りたいと思っています。


この日できる、精一杯の「プレゼン」だったと思います。

今思えば、もうすでに「やります?やりません?」の質問が、この言葉の後に隠れてるよねw


どう思われ、どう判断されるかはわかりません。
でも、僕はどう転んでもよかった。
ワイナリーの素敵なところは分かったし、思いの丈は伝えました。
やれることは、やったかな。
あとは、「本人ジャッジ」していただくのみです。


最終ジャッジ。


社長は僕と向き合って、言いました。

取り組みの中身については、私はよくわからんのだけどね…


…なるほど、だから、醸造家さんのフォローに全然食いつかなかったわけだ。笑

…じゃあ、やってみようか。

あとはコイツと話して進めてくれ。よろしくお願いします。

そう言って醸造家さんにバトンを渡し、社長は一足先に戻って行かれたのでした。



久保田さんの情熱で、社長を動かしましたね。

ドアが閉まると、傍にいたスタッフさんが、そう僕に告げました。


つづく。



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