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【海辺のゲルハルト・リヒター】 見えないもの、見たいこころ 野崎道雄コレクション受贈記念 神奈川県立近代美術館 葉山

2023年6月19日。曇。
神奈川県立近代美術館葉山でも、寄贈による新所蔵品展のお披露目が行われている。
「でも」というのは、2023年GWに静岡県立近代美術館で開催された新所蔵品展も寄贈品中心のお披露目だったからだ。
静岡県美と交流を続けた現代美術コレクターの逝去により、生前のコレクションが美術館へ寄贈された。内容は現代美術作品中心。
昨年度購入予算0円&現代美術作品手薄だった、という公立の美術館にとってありがたい寄贈だっただろう。

前置きがながくなった。
では神奈川県立近代美術館葉山に寄贈された作品は。

なんとゲルハルト・リヒター作品60点を含むドイツ作家作品中心の152点。
リヒター作品を日本の美術館が購入した事例は、某シワ伸ばしクリームが絶好調なポーラ美術館が30億円で落札したことが記憶に新しいだろう。
上記価格からわかるように、リヒター作品を公立美術館が購入するのは残念ながらとてもハードルが高い。

それを60点。
寄贈。購入予算0円。
ありがたい話である。
しかし「存命作家最高額」とかマーケットの話はあくまで付録でしかない。

やはりリヒターといえば「見ること、描くって何なの?色って何?」を追求し続けている生涯を通した画業が最大の魅力だろう。
大きく言えば「目とは?」。

そんな作家の作品をコツコツと自宅に飾るためにコレクションを続けた野崎道雄氏は眼科医である。

コレクションのマークも目がモチーフ

眼科医。
この解説を読んでものすごく腑に落ちてしまったというか。
目の医療に尽力された方が「目とは?を追求した作家」の作品をコレクションしてきた、ということ。
その一本筋の通った感。なんだか感激してしまった。

フォトペインティングからアブストラクトペインティングまでが通しで見れる作品群。
自宅で楽しむために購入した絵画が中心なので大型の作品は少ないが、
だからこそのリアリティというか。
野崎さんが大事に飾ってきたのだろうな、それこそ本来の絵画の身近な楽しみだよなぁとも感じる。
アブストラクトペインティングの作品群はつい画面に接近してみてみたくなる。
眼の前に絵の具の壁があるような。
でも何か奥に描かれているような。
自分は何を見ているのか、がわからなくなってくる。
絵画の画面に空間がない絵の具の密集を感じるリヒターの絵。
先日見たサム・フランシスの抜けのある画面とはまったく別。

同じ抽象絵画、なのだけれど。
絵画って面白いな。

デュシャンオマージュの瀧口修造作品。こちらのみ撮影可。やはり目にまつわるもの。

リヒターの他にもヨーゼフ・ボイスやデュシャン、マンレイ、ロイ・リキテンスタインなども。
非常に面白いコレクション。


今回は子供と一緒に見に行った。
6年生の長男曰く、「何が書いてあるかわからない、と思って抽象絵画は好きではなかったが、リヒターさんが何を描こうとしたのか、どうやって描いていったのか考えると面白く思えた。じっと見ていられた」と言っていた。
おお!それは目玉の成長なんじゃないかな。
絵画を通して作者を思うのも楽しみの一つだ。

2023年7月2日までの開催。
これだけの数をまとめて見れる機会もそうそうないのでぜひ。

美術館裏手の海水浴場は海の家がスタンバイを始めていた。

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