商店街のブティックはAIに代替されない?

ローカルインタビューメディアをつくっていると、商店街にある「あのお店ってどんなお客さんがいるんだろう?」という長年の疑問を解決できることがある。その一つが、ブティックだ。

商店街でよく見るブティックだが、実際に入ったことがある人はどれだけいるだろうか?お店の目の前を通り過ぎる際に、店頭に並ぶ50〜70代向けの知らないブランドの服をチラ見したことがあるという程度という人も多いだろう。「これは自分には関係ない世界だ」と。

私は、どうしてブティックがどの街の商店街でも存在しているのかずっと疑問だった。スーパーやモールがある地域で、商店街でお店をやり続けるというのは簡単なことではないはずだろう。自分の常識では考えられない論理が働いているに違いない。でなければ、とっくになくなっているはずだ。なんてことを思ってた。

なんと、先日、ブティックの店主さんにインタビューをする機会ができた。大変失礼ながら、ブティックにはそこまで多くの客足はないものだと思っていたため、営業時間内にお約束をいただいた。そしてそれは、大間違いだった。

インタビューをしようとしたら、すぐに70代近くのお客さんが来店した。私はインタビューを中断し、邪魔にならないよう見えないところで待機した。天気か何かのなんでもない世間話を始めて、完全に買いに来たお客さんではないように思えた。ところが10分後、そのお客さんは4,000円の服を買っていった。

私は驚いた。驚愕といっていい。決して営業熱心な様子ではなかったのに、世間話からクロージングをした店主さんは只者ではないと思った。インタビューを再開し、「さっきのお客さん買いましたね」と言うと「ありがたいですね」と一言。これは何が起きてるんだろうと思った。

その後もインタビューをしようと思ったらすぐに来客があり、度々インタビューは中断した。商店街のブティックには、ひっきりなしにお客さんが来ていたのだ。合間合間でなんとかインタビューをすると、なんとその商店主さんは自分でブティックを始めてもう46年経ったという。

この人気と継続の理由を伺うと、終始「全部お客さんのおかげ」「お客さんが神様に見えることがあるんです」という。中には40年以上に渡るリピーターもいるらしい。つまり、初めて来店したときに19歳だった方が、60歳になったいまでも買いに来てくれるというのだ。ブティックの店主とお客さんの繋がりの強さを感じた。商店街にはそういう磁場を持つお店が残っていくのだと思い知らされた。

ローカルインタビューメディアをつくっていると、身近にあるがまったく知らない世界というのはあるものだと、つくづく感じる。絶対にAIに仕事を奪われない人が、商店街のブティックにはいた。よく知らないけど、スナックとかもそういうことなのかも知れない。自分が知らない世界を侮ってはいけない、自分の常識を疑わないといけないなと反省をしたブティックの話。

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