【短編小説】「田中くん、きみは心を見つけたんだね」木陰から佐々木先生が現れた。
佐々木先生いわく、人間はすべからく正しい道に進むことができるのだという。たとえ一度間違えたとしても、必ず正しい道に戻ってこれるのだと。典拠を示して、とぼくが言うと先生は「そんなものは必要ないわ、心に従えば良いのよ」と意味の通らないことを言った。ぼくは驚いて食べかけのブドウ飴を落としてしまい、足元に蟻が群がってきた。
解剖学の資料をひもといても、どこにも「心」という器官は見つからなかったから、考えられる可能性は二つだけだった。一つは解剖学者たちが見落としてる。もう一つは佐