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精神科が語るギャンブル依存症の危険性について

平素よりお世話になります。六本木クリニックです。
昨日から大谷翔平の通訳、水原一平氏の賭博疑惑が日本を騒がせています。

おそらく本人もやめようと思いながらも、やめることができなかったのだと推測できます。スポーツと賭博という組み合わせは、相乗効果でドーパミンが分泌させてしまいます。思えば、往年のホームラン王ハンク・アーロンも野球賭博で永久追放をされ、日本球界でも「黒い霧事件」が昭和の大事件として計10名のプロ野球選手が巻き込まれました。

今回は、そんな事件になってしまうギャンブル依存症について臨床医としての視点を以て、解説してゆきたいと思います。


ギャンブル依存症の歴史

いわゆるギャンブル依存症は、1970年代後半にWHOにおいて「病的賭博」という名称で正式に病気として認められました。その後の研究によってこの病気への理解が進み、ギャンブルがやめられないメカニズムはアルコール依存症や薬物依存症と似ている点が多いことがわかってきました。このため、アルコール依存症等と同じ疾病分類(物質使用障害および行動嗜癖)に「ギャンブル障害」として位置づけられ、依存症として認められるようになりました。

ギャンブル依存症の症状

ギャンブル依存症の症状は、

  • ギャンブルにのめり込む

  • 興奮を求めて掛金が増えていく

  • ギャンブルを減らそう、やめようとしてもうまくいかない

  • ギャンブルをしないと落ち着かない

  • 負けたお金をギャンブルで取り返そうとする

  • ギャンブルのことで嘘をついたり借金したりする

といった症状が特徴的です。

ギャンブルをする人は誰でもギャンブル依存症になりえます。リスク因子としては、若い人、男性、ストレスへの対処がうまくない人、ギャンブルが身近にあるなどの環境要因などが指摘されています。

報酬系ドーパミンの罠

また、パチンコやスロットのような電子ゲーム機の場合は、機械そのものに依存させる要因があります。例えば、あと一歩で当たる場面を見ると、脳の中の高揚感を感じる部位(「報酬系」と呼ばれ、ドーパミンという物質が関係しています)の働きが活発になってギャンブルを続けたいと思わせてしまいます。また、パチンコ台やスロット台の画像や音響には、負けていても勝っているかのような錯覚をおこさせて脳内の報酬系を活発にする効果があります。

最初のうちは、このような報酬系の反応が関与してギャンブルを繰り返しますが、依存が形成されるとやめたいと思いながらもなかなかやめられない状態へと移行していきます。

人間信じたいものを信じてしまう

ギャンブル依存症の方々は、負けが続いても最終的には勝てると確信していたり、負けた時のことはよく覚えていないのに、勝った時のことはよく覚えていたり、迷信的な行動で運をコントロールできると信じたりするように、ギャンブルに対する考え方が偏っている場合がほとんどです。

認知の歪み-認知療法のすすめ

ギャンブル依存症の治療では、このような考え方の偏りを見直したり、金銭管理をはじめとした日常生活を変えたりすることでギャンブルをしたい気持ちを低減させたり、効果的な対処法を身につける認知行動療法と呼ばれる治療プログラムが有効です。また、ギャンブラーズ・アノニマス(GA)というギャンブル依存症の人達の自助グループが全国にあり、GAミーティングに参加することも病気からの回復の助けになります。

まとめ

本日は以上となります。

また日本ハム時代から水原氏をよく知る方のインタビューからは、「飲みに行くのにも誘いやすく、選手にも親身になってくれる」という意見が寄せられていました。そうした人柄か、軽い気持ちで最初に誘われたことがきっかけだったのでしょう。メジャーのスター選手のセレブな生活も目の当たりにしたことも刺激を受け、身分不相応な金銭感覚になってしまったのかもしれません。

プロ野球史上最も高額な通訳から、一転6億円の借金を背負うことになってしまいましたが、その影響は内外問わず計り知れないでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。当Noteでは世間で流行しているトレンドを心療内科の視点から解説しております。ADHD、ASDなどの発達障害、ストレス社会によるPTSDやパニック障害についても今後書いてゆきたいと思います。見逃したくない、という方はぜひフォローをお願いいたします

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