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おやじパンクス、恋をする。#177

 俺たちは駐車場の入口脇、電柱に隠れるみたいに固まって、「行けよ」「いやお前こそ行けよ」みたいなガキ臭え会話を交わしつつ、「なんだよてめえら、情けねえな」つって涼介が一人でズンズン歩いていったら、「いや、待て待て待て」と引っぱり戻したり、なんてバカなことをやってた。

 とりあえず一服すっかつって、たまたま電柱に灰皿用のカンカンがくくられてたのをいいことに、四十過ぎの不良中年五人、仲良くウンコ座りしてタバコを吸った。

 しばらくすると、五、六台の車が連なって駐車場に入ってきた。

 どれもあんまり柄のよくなさそうな、人を威嚇するような黒塗りの車で、ああもう、そういうの見るとなんでか勝手に臨戦態勢をとってしまうおっさん四人、「なんだあ?」さっそく涼介が立ち上がり吸っていたタバコを地面に投げ捨てる。それをタカが拾って灰皿に入れる。

 ボンがゆったりと、だが刺々しい声で「ヤクザ屋さんには見えねえけどなあ」と呟き、「でもまあ、あの梶さんの葬式だからよ」カズが一人納得したように言う。

 だが俺はその最後列の黒い車、少し遅れて入ってきた、ひときわセンスのないシャコタンスモークなその古いセダンを見た時、ぞわぞわっと首筋の毛が逆立つような感覚を覚えた。

「おい、あれって……」

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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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