見出し画像

おやじパンクス、恋をする。#122

「なんだよそれ」

「いやよ、だから、倫ちゃんが雄大をあんなに心配してるのが、なんでか分からねえっていうか」

「あー、まあな」

 確かに、言われてみればそうかもしれない。身内にしか分からねえことがあるんだろうと勝手に納得してはいたが、少なくとも俺の知ってる雄大は、バカでデブで女々しくて生意気なだけのガキンチョだ。

「俺もそうだよ。雄大には一回しか会ってねえし、そんな大した野郎にも見えなかったし、別にそこまで心配するようなもんでもねえんじゃねえかって思ったんだよ」

 そう言いながらタカは皮付きのポテトをケチャップにつけ、口に放り込む。そうだよな、と同意の言葉を口にしそうになるのを、ふと止める。なんかその言葉の先に、「でもな」って続くような気がしたんだよ。

 で、やっぱそうだった。タカは「でもな」って言って、話し始めたんだ。

「でもな、もしかしたらあいつ、俺みたいな感じなのかなーって思ったら、ちょっと分かるような気がしてさ」

「俺みたいな感じ?」

 おめえみたいな変な奴はなかなかいねえよって意味で、俺は茶化すように答えたんだ。だけどタカはしごく真面目な顔で話を続けた。

「うん。こないだ倫ちゃんの話聞いててさ、ちょっと言ってただろ。頼れる人がいないと壊れちゃうって」

「ああ、壊れるって意味がよく分かんなかったけど、言ってたな」

「俺は分かるんだよ、壊れるってこと」

 タカの言葉に俺はポテトを掴もうとする手を思わず止めた。

「つうか、ガキの頃、俺もそうだったんだよ。俺みたいな感じって、そういうことな」

「……分かんねえよ、どうなるんだよ、壊れるって」

「それは説明が難しいんだけどさ。簡単に言えば、わけがわからなくなる」

「なんだよそれ。それこそわけわかんねえよ」

 俺は思わず笑った。小学生の作文かよって。だが、それに続くタカの言葉は、全然小学生っぽくなかったんだ。

続きを読む
LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?