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おやじパンクス、恋をする。#189

 涼介が答えると、「ああ、そうかお前は会ってるんだもんな」とボンが言って、「もしかしてその大将は……」と彼女を見る。

「仕事よ。彼は来ないわ」

「マジかよ、とんでもねえ野郎だな」思わず声を荒げる俺。

「まあ、そういう熱心さを買われて、ウチに呼ばれたわけだから。彼のミッションは梶商事の立て直し。社長のお葬式に出ることじゃないわ」

「そうは言ってもよぉ、どうかと思うけどな」俺は納得がいかない。

「そういや、社長は誰になるんだ? さっきの渋いおっさん?」タカがあっけらかんと言う。さっきの渋いおっさんてのは、佐島さんのことだろう。確か梶さんとも長い間柄だって彼女は言ってたな。意外と、鋭い指摘なのかもしれない。

「バカ、嵯峨野に決まってんだろ。その為に来たんだからよ」とカズ。ああ、まあ、そうなるのかな、いやでも、涼介のMacで見た嵯峨野は社長っつうにはちょっと若すぎる気がするけどな。

「まだ決まってないわ。今のところ」

 だが、彼女はどこか気まずそうに、そう言った。

「はあ? じゃあ今は社長不在ってわけかよ」噛み付く涼介。ほんとこいつはどこにでも噛み付くな。

 彼女の顔が曇ってる感じがして、ああ、よく分かんねえけどいろいろあるんだろうなと、彼女を女として好きになっちまった弱みってんだか、愛しの彼女が困ってんだから守るのが当然と、俺は瞬間的に納得した。

「そんな事より雄大だろうがよ、あいつ、車の中で死んでんじゃねえのか?」

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LOVE IS [NOT] DEAD. 目次へ

この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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