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【自分探し】ひとりで屋久島に行ってきた。 その1

38歳、屋久島一人旅

3泊4日で屋久島に行ってきた。妻子持ちの38歳フリーランス、自分探しの一人旅。その年齢で自分探しっておっさんマジかよ、そんな声が聞こえてきそうだがマジもマジだ。ヒゲに白髪が交じるようになった今でも精神年齢は16歳で止まったまま。中二病真っ盛り。ノーミュージックノーライフ。まあいいや、とにかく旅の記憶が残っているうちに、多少の記録をつけておく。ちなみに位置的にはこんな感じ。自分は千葉からなので、羽田空港→鹿児島空港→船で屋久島、という移動になる(飛行機で行くことも可)。

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いきなり飛行機に乗り遅れかける

最寄り駅から羽田空港までは高速バスを利用する。片道1000円以上とそこそこかかるが、大きなスーツケースも預かってくれるし、1時間弱でターミナルの目の前まで連れて行ってくれるので、ラクだ。空港に用事がある場合は電車じゃなくいつもこれを利用してきた。

ただ今回、飛行機の出発が朝6:25、できれば1時間くらい前に着いておきたいが、高速バスの始発は5時頃で、到着は6時頃になってしまう。

「まあ、国内線だし大丈夫か」

そう思ったのが間違いだった。バスは予定通り6時にターミナル前に到着。運転手さんからスーツケースを受け取り、空港構内に入った瞬間に「ヤバいかも」と思った。そこには、荷物を預けるために並んだ人間の列、列、列。こんなクソ早い時間なのに100人以上がズラーと順番待ちをしてやがる(いらっしゃる)。おいおいちょっと待ってくれ、俺の飛行機はあと30分かからず出発しちまうんだぞ、いや、そもそも搭乗口には離陸15分前に行かなきゃならないから、つまり6:10、ええといまが6時ぴったりだから……あと10分しかねえじゃねえか。

と、自分探しどころか、出発すらできずに終わるのかとヒヤヒヤしながら並んでいたのだが、結果から言うと、空港スタッフさんのナイスな計らいもあって、ギリギリ間に合った。あんなに空港内を走ったのは初めてだった。そんなのドラマとか映画だけの話だと思ってたよ。

鹿児島空港〜天文館

昨日あんまり寝れなかったこともあって、離陸後は気絶するように眠りの世界へ。飛行機の中で読もうと思っていた小説も一度も開くことなく、着陸準備のアナウンスで目が覚めた。

ちなみに今回の旅、オリオンツアーという会社の安いパックを選んでいる。内容は飛行機の旅費と民宿の宿泊費、それに2日目に予定している縄文杉トレッキングのガイド代だけで、添乗員もいなければ同行者もいない。チケットはまとめて売ってやるから現地では自分で頑張ってね、ということだ。ユーアーウェルカム。望むところだ。こちとら集団行動のまるでできない中年ボッチだぜ。

ということで降り立った鹿児島空港、まだ8時過ぎ。昼頃に屋久島行きの高速船に乗るまでは予定なし。荷物を受け取り、観光案内のスタッフさんにバスの乗り場を聞き、船の乗り場のある鹿児島中央方面に向かった。

鹿児島空港から鹿児島中央駅付近までは高速バスで1時間程度。思ったより離れてんだなという印象。とはいえ既に自分は九州最南端県・鹿児島にいるわけで、関東との違いを見つけようと車窓の外に目を凝らすが、やはりそこは同じ日本、すぐに気づくような変化はない。植物の感じが少し南国っぽい雰囲気だが、気のせいかもしれない。

鹿児島中央駅ではなく天文館という駅で降りた。観光案内のスタッフさん曰く、ここいらが鹿児島一番の繁華街らしい。確かになかなか栄えていて賑わっている。少なくとも千葉駅よりは都会だったね。

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やることもないのでそのへんをブラブラし、鹿児島=西郷どんということで、西郷隆盛の像を見に行ったりしたが、どうにもテンションは上がらない。アラフォーのくせに中二病気質、いわゆる観光地観光地した観光地を楽しめない。足は自然と人のいない方向へと進み、細い路地をいくつも過ぎていった先で唐突に開けた視界、その先に、突然飛び込んできた大きな山。それもその頭からはモクモクと煙が立ち上っている。

桜島。いやていうか噴火してんじゃん。

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近くで開店準備をしていた洋服店のおっちゃんに、ドキドキしながら声をかけた。「あれ、桜島ですよね。噴火してますよね」観光客によく声をかけられるのかおっちゃんは全く驚いた反応も見せず「あ、噴火してる?」とのんびり返してくる。「煙出てますよ」「あ、じゃあそうだね」。呑気なもんである。

このおっちゃん、すごくいい人で、高速船の時間までの過ごし方をいろいろアドバイスしてくれた。結果的にそのプランを採用することはなかったが、(観光案内のスタッフさんを除けば)初めてコミュニケーションした地元民がおっちゃんだったことで、「鹿児島の人は優しい」って印象ができあがってしまった。単純だな。

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高速船で屋久島へ

埠頭近くの商業施設で黒豚のトンカツを食べ、いよいよ高速船に乗船。高速船というのは文字通り高速で移動する平べったい船で、屋久島まで片道2時間。その分、4時間かかるフェリーに比べて値段も高め。

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さすがに船に乗ると「旅」の感じが出てくる。窓の外で埠頭の先端が遠ざかっていく。そのまま鹿児島湾を南下し、やがて九州本土からも離れて完全な海になる。鹿児島から屋久島まで200km足らずの距離とは言え、海と空以外に何も見えない風景の中を2時間も行くのは初めての経験。天気は快晴、海の表面に漂う海草の様子や、意外なほどはっきり見える潮の流れ、あれが赤潮っていうのだろうか(違う?)所々に溜まって漂っている微かに赤みがかった淀み。

眠ったり覚醒したりを繰り返しながらそれらを見ていると、やがて船内アナウンスで屋久島への到着が近いことが告げられる。快晴の空と正反対に靄がかった頭に、突然それは飛び込んできた。

屋久島。

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自分は今回、敢えて前情報をできるだけ入れずにここに来ている。知っているのは、縄文杉があること、世界自然遺産であること、雨が多いこと、それくらいだ。島がどれくらいの大きさなのか、どんな形をしているか、どんな見た目なのかも、まったく知らなかったのだ。勝手に想像していたのは、南国によくある、平坦な風景。どこまでも見通せる道、のどかな田園風景、のんびりあくびをする牛や豚、そんなイメージ。だから実際の屋久島を目にしたとき、訪れたのは強烈な驚きだった。

山。

巨大な山。

島全体が山のようだった。

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※Google Earthで見た屋久島。後で知ったが、屋久島最高峰の宮之浦岳の標高は約2000mある。

降り立つ

ということでついに降り立った屋久島。港と高い山とが隣接しているような奇妙な光景に、早くも現実感がなくなり始める。

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とはいえ、添乗員も迎えのタクシーもない完全な一人旅だ。今日泊まる宿は決まっているが、その住所も調べていない。ぼんやりしている間に、同じ船でやってきた他の人達は、迷うことなくあっちの車へあっちのタクシーへと消えていき、気づけば誰もいなくなってしまっていた。現実感がないとか言ってる場合じゃない。

とりあえずGoogle Mapで宿の住所を調べた。すると、ここ宮之浦港から歩いて15分程度らしい。

「……まあ、行ってみるか」

そんなわけで、重いスーツケースをゴロゴロ引きながら、歩き始めた。

その2につづく
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