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おやじパンクス、恋をする。#111

 俺は唸った。結局、カズの想像通りじゃねえか。

 でも、社会っつうのはそういうもんなんだよな。そして彼女は、そういう社会の中でいろいろ頑張っていたわけでさ。

「経緯はなんとなくわかったけど、でも、そもそもそのパーティーって何なんだよ」

 カズが言って、タカが頷く。

「そうだよ、そのパーティーって何なんだよ」いやタカ、それいまカズが聞いたから。

 まあでも確かに、それは俺にもよく分からねえ。当の涼介にしたって、まあ途中退場させられたからってのもあるが、開催趣旨は分からなかったと言っていた。

 だいたい、洋服屋や美容室とかならわかるが、不動産会社がクラブでパーティーを開くなんて聞いたことがねえ。それに、取引先限定とかならまだしも、一般客OKってのにも違和感がある。

 俺がその辺を言うと、彼女はふう、と溜息をついた。それから他言無用よ、と言って話し始めた。

「あれは嵯峨野が始める新しいビジネスのための、布石みたいなもの。うちの社員さんたちにとっては、嵯峨野が事業部長として公の場で挨拶をしたって部分がどうしても気になってしまうようだけど、嵯峨野にとってはむしろ、社員以外の人への発信のほうがずっと重要だったの」

「よく分かんねえな。新しいビジネスって?」とカズ。

「そうね、一言で言えば情報商材を売るってことかな。あるいはそれを入口にしたネットワークビジネス。いずれにしても、ちょっと胡散臭さのする商売よ。特に古い人間から見たら、理解できない部分も多いんだけど」

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この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ

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