おやじパンクス、恋をする。#029
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。
「だけどよ、彼女とさっきのあの野郎が普通に知り合いだってこともあり得るだろ。付き合ってんのかも知れねえし」
クソ、てめえに言われなくてもその可能性をこっちは考えてんだよ。「付き合って」の部分が、「突き合って」に変換されて耳に刺さりやがる。
激しく身体を交わし合う彼女と、あのバカのチンポを咥える彼女……ああクソ。
俺は思わず口を開く。
「いやでもよ! 最後の彼女の顔を見ただろ!? なんでツレとか恋人とかが来るのにあんな辛そうな顔しなきゃなんねえんだよ! だいたいあんなセンスの悪いバカと彼女が突き合う……付き合うわけねえじゃねえか!」
「なんだよ、でっけえ声出すなよ。そんなこと俺が分かるわけねえだろ」とタカ。
「うるせえな! 俺だって分かんねえよ」
「タカ、察してやれよ。恋は盲目ってな」とボンが目を閉じてうんうんと頷きながら言う。クソ、ぜってーバカにしてやがる。
「じゃあ、ホントに確かめに行きゃいいじゃねえかよ。なんなんだよもう」事情を飲み込めないらしいタカが困った顔で言う。
「いや、それはだって、彼女にも迷惑だろうし……」そう言われたら言われたで途端に弱気になる俺。
だいたいほら、もう今さら追いかけても、あいつはもう、どっかの部屋に入っちまった後だろうし。
「なんだよお前、ハッキリしねえな」気の長いタカもそろそろ苛立ってきたようだ。まあ無理もねえ。無理もねえが、こっちだって無理もねえんだ。クソ。
「じゃあよ、こういのはどうだ?」
やいやい言い合う俺らの後ろで、いつの間にかまたマンションを見上げていた涼介が、口元に薄っすらと笑みを浮かべて、言った。
「特等席から、見物するってのはよ」
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