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真夏のエレベーター

街には、真夏の湿気と熱が充満していた。
まして今は、熱気と興奮に彩られた年に一度の大きな祭りの真っ只中。
本番が夜だが、祭りの熱は、昼間も冷めることはなかった。

街には、大きなビルがそびえ立っていた。
街のシンボルであるそのビルには、ガラス張りのエレベーターがあった。
エレベーターは祭りに浮かれた満員の客を乗せ、せわしなく上り下りを繰り返していた。

エレベーターを待つ人に混じって、小さな女の子がいた。まだ、2歳か3歳くらい。エレベーターのドアが開いて、人が出入りし、ドアが閉まって、カゴが空に向かって登っていくさまを、じっと見つめていた。

何度目かのドアが開いた時、大人たちの人並みに押されながら、女の子がすっとエレベーターへ吸い込まれていった。
女の子はエレベーターの隅っこで小さく手を振っていた。
エレベーターのドアが閉まり、彼女は空へと登っていった。

それが、43年前、「迷子」という名の、私の人生初めての旅。


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