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【読書ノート】『美しき口もと 目は緑』

『美しき口もと 目は緑』(『ナインストーリーズ』より)
サリンジャー著


主な登場人物
リー:主人公で、弁護士
アーサー:リーの同僚(後輩)弁護士
ジョーニー:アーサーの妻なのだけど、リーと浮気をしている。

リーは、ジョーニーと浮気をしていた。朝方、アーサーから、電話を受けるところから物語は始まる。

キーワードをいくつか挙げてみる。

"美しき口もと"
文字通りにはその人の口元が美しい、つまり魅力的または視覚的に魅力的であることを示す。しかし、より深い意味では、それは話し方、表現力、またはその人の感情を伝える能力の象徴となる。

"目は緑"
文字通りには、その人の瞳が緑色であることを示します。しかし、詩や文学的な表現では、緑の目は新鮮さ、生命力、自然、または時には嫉妬や欲望の象徴となる。


タイトル『美しき口もと 目は緑』これは、魅力的な女性ジョーニーをさしているのだけど、何が魅力的なのか?

献身的な、知的な雰囲気の女性でありながら、愛されるベキ女性であることを自覚して、周りの男性に愛を求めるという愛されてしまう体質だということなのだと理解した。




物語は、不思議なエンディングを迎える。
アーサーは、リーへの電話を一旦切ったあと、再び、リーに電話して、妻が、帰ってきたことを知らせる。
リーは、驚く、なぜなら、その言葉は、自分に対する気遣いの言葉であり、ジョーニー現実には、自分(リー)の枕元にいるのだから。

その電話を受けたあと、リーは、考え込むという場面で、物語は終わる。

リーは、動物的に(牡)として、ジョーニーとの情事を楽しんでいたのだけど、二度目のアーサーからの電話で、自分は、人間であり、社会的な存在でもあるということに気づいたということなのだろう。

物語の主題は何か?

人間は、基本的に、動物的な欲求から、幸せを掴もうとする。
一方で、社会的な存在として、理性的であることが、より深い幸せであることにも気づくものだと理解した。

魅力的であることは、生きていく上では、最も基本的な本能なのだということ。

動物的に愛されることをひたすら求める女性の存在に気づくと、男性も、動物的にその女性を愛してしまう。

人間には、その先がある。

追記
この物語にはいろいろな解釈が、できる。
①妻の浮気相手と知らずに妻の浮気について愚痴るというおバカな夫アーサー説。
②実は夫は、妻の浮気相手を知っていて、わざと、浮気現場に電話する策士の夫アーサー説。

また、二度目の電話をして、妻が無事に帰って来たと嘘の連絡をする理由についてもいろいろ解釈が存在している。
③職場の同僚に早朝、電話で起こしてまで、愚痴に付き合ってくれて、心配をかけてしまったことを反省して、妻は帰ってきたから、もう大丈夫だと嘘の連絡をする夫アーサー善人説。
④妻の浮気で頭がおかしくなって妻の幻を見るというアーサー幻覚説。
⑤敢えて、妻が帰ってきたと嘘の連絡をするという夫アーサー策士説。

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