『あなたの人生の物語』
テッド・チャン著

『あなたの人生の物語』という短編集の中の、同タイトルの物語。

映画『メッセージ』の原作。
ただし、内容は、若干、映画と原作では、異なっている。

映画の方がわかりやすいのかもしれないけど、原作の方が、深みを感じる。

言語学博士のルイーズ・バンクスが娘に語りかける物語とヘプタポットと名付けられたエイリアンの言語をエイリアンとのコミュニケーションを通して理解していく物語が、並行して綴られる。

はじめ、娘との物語の意図が何だかわからず謎だったのだけどね。読み進めるうちにそういうことなんだあという体験ができる。


人間というのは、原因と結果で物事を見る。それに対して、ヘプタポッドは目的を感じる力で世界を見ることが、できる。

ルイーズはそのヘプタポットの言語の学びを通して、考え方、感じ方が変わっていく。物事を書き表す過程で、未来を感じ取ることができることに気づく。

同僚イアンと結婚して、娘が生まれる。そして、その娘がたどるであろう成長の過程を、イアンと離婚することになる未来を全て、みえるようになってしまう。未来を感じ取りなが、一つ一つの自分の運命を現実を体感する。

ヘプタポットと言う言語をルイーズに授けることが、が、エイリアンからのメッセージであり、人類への贈り物ということなのだろう。

宇宙人となかなか遭遇しないことについての学説に「動物園仮説」又は「保護区仮説」というものがある。
異星人と接触した結果地球上に起きる混乱を避けるなどの目的で敢えて目立った接触を行わない。例えば、「未開惑星保護条約（宇宙に大規模に進出し得ない文明レベルの惑星には介入しない）」のような星系間の条約が存在するという学説。

そういう保護観察してくれているエイリアンが、地球人の中に、進化に必要な言語を習得できるレベルの人間がいることを知って地球に現れたという考え方かな？

まあ、いろいろ論点を投げかけてくれる物語だと思った。