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『国境の南、太陽の西』

『国境の南、太陽の西』
村上春樹著

再読版

一人っ子で不完全な自分に悩む男性ハジメが、小学校時代に好きだった島本さんという女性と大人になって再会し、希望、絶望、理想、現実の間をだらだら、揺れ動くという物語。読んでいて、主人公ハジメの身勝手な態度に頭にくる部分は多いのだけど。

「国境の南」とは、通常、メキシコやラテンアメリカ諸国を指す言葉。アメリカとラテンアメリカとの文化的あるいは地理的な分断を表現している。そんなところから、異国情緒や冒険を想起させるのだという。

「太陽の西」は、想像上あるいは未知の場所を指すらしい。切望や手の届かない願望を表現する際に用いられる。

この定義を知ると少し別の見方もできる。

大人になって結婚してジャズ・バーを経営するハジメは、表面的には幸せそうな生活を送っていたのだけど、心の中に何か物足りなさを感じていた。そこに、初恋の島本さんが現れる。島本さんは美しく、ハジメは彼女に強く惹かれてしまう。島本さんも、ハジメと人生を分かち合いたいと思っていた。お互いにとって、国境の南であり、太陽の西なのだと感じた。

究極的には、島本さんというのは、幽霊?あるいは、幻だったのではないか?とか思った。

まあ、物語としては、二人にとって一瞬の幸せを感じることができたことが、よかったのだろうけどね。

まあ、そうは、言ってもハジメは、結婚しているからね。何なんだ話では、ある。

人生には完璧な答えが、あるわけでは、ないので、不完全な自分を自覚することが、大事なことなのだろう。

過去を引きずってもしかたないのだけど、目の前に美しい姿で初恋の人が、現れたら、難しいことになるのかもしれない。

現実は、お互い、変わり果てた姿と対面するのだから、冷静なら、こころは動かないのではないかと思うのだけどね。

まあ、恋焦がれてしまっていたら、関係ないのかな?

昔想いを寄せていたひとと同性同名の名前を見かけたりすると、何となく気になったりしないというわけでは、ないのだけどね。どうしても、過去の想い出って美化しがちだからね。基本は関わらないのが、賢明なのだと思った。

When I fall in love bill evans

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