現代版・徒然草【54】(第110段・勝つ秘訣)

美空ひばりの歌である『柔(やわら)』の歌い出しのフレーズに、「勝つと思うな思えば負けよ」というのがある。

徒然草の第110段でも、双六(すごろく)を例にして同じようなことを言っている。

昔の双六は、今で言う双六とは違って、将棋や囲碁と同じように、双六盤でお互いの陣地へ白黒15個の駒をサイコロを振って進めていた。

では、原文を読んでみよう。

①双六(すごろく)の上手といひし人に、その手立を問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手か疾く負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目(ひとめ)なりともおそく負くべき手につくべし」と言ふ。
②道を知れる教へ、身を治め、国を保たん道も、またしかなり。

以上である。

①の文では、双六が強い人に、勝つ方法を聞いたところ、「勝とうと思って打つな。負けないように打つのだ。どの手が、早く負けてしまうのかを考えて、その手を使わずに、なるべく盤の1マスでも遅く負けるようにすべきだ。」と答えた。

②でも触れているとおり、双六に限らず、こういった考え方は、自分自身の身の振り方や国の治め方にも通ずる。

要は、何事も感情的にならず、冷静に筋道を読んで、リスクを低減しながら突き進んでいくのが良い結果をもたらすのである。

当たり前のことなのだが、私たちは、なかなかそれができないでいるのも事実である。

その理由として考えられるのは、相手と関わる難しさだったり、自分自身の意志の弱さだったりする。

まずは、自分だけの世界に没頭できる環境をつくって、そこにしばらく身を置きながら、机上で紙とペンを動かし、策を練ってみる。

あらゆるケースを想定して、最後の切り札も含めて何枚かのカードを準備しておく。

そうして、臨機応変に日常の出来事に落ち着いて対応できるようになれば、勝ち負けにこだわらず、常に最適解を導き出せる戦い方ができるのだ。

祝日がない6月も、いよいよ明日から後半戦である。

あと2週間、頑張って乗り切るための方法を、前半戦の反省も踏まえて、冷静に打ち立ててみてはいかがだろうか。

つまり、ストレスに勝つ方法ではなく、負けない方法を考えるのである。



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