古典100選(11)竹取物語

今日は、今でも「かぐや姫」の物語として、子どもにも親しまれている『竹取物語』について紹介しよう。

「一寸法師」や「浦島太郎」など、私たちが子どものころに読み聞かせなどをしてもらったおとぎ話は、実は江戸時代からあるものだが、「かぐや姫」に比べたら歴史はそんなに長くない。

「かぐや姫」のお話の元になっている『竹取物語』は、紫式部が『源氏物語』でも触れているように、日本最古の物語である。

では、どれだけ古いのかというと、成立した年は未詳ではあるが、9世紀後半ではないかといわれている。

したがって、1100年以上も前の物語になるのである。その物語が、時代とともに読み継がれ、今もなお親しまれているのはすごいことである。

さて、かぐや姫のお話は、おじいさんがあるとき山の中で光る竹を切ってみると、竹の中からかわいい女の子が見えて、その子を20年余りおばあさんと一緒に大切に育て、かぐや姫はその間に多くの男から求婚されても断り続けて、おじいさんやおばあさんと一緒に暮らしていくわけだが、ある日突然、月に帰ることになったという内容であることは、ご存じのことだろう。

今日は、その月へ帰ることになった場面(=「かぐや姫の昇天」)の冒頭部を紹介しよう。

①宵うち過ぎて、子(ね)の時ばかりに、家の辺り、昼の明かさにも過ぎて光りたり。 
②望月の明かさを十(とお)合はせたるばかりにて、在る人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。 
③大空より、人、雲に乗りて下り来て、土より五尺ばかり上がりたるほどに、立ち連ねたり。 
④内外なる人の心ども、ものに襲はるるやうにて、あひ戦はむ心もなかりけり。 

以上である。

①では、子(ね)の時というのは「夜中の0時から前後1時間の範囲」をいう。それが、昼の明るさ以上に明るかったというのは、眩しいほどだったのだろう。

②で、その明るさを例えるなら、満月を10個集めたようなもので、人の毛穴まで見えるという。

③では、空から人が雲に乗って下りてきて、地面から5尺(=約1m50cm)ほどの高さで、並んで立っていたという。つまり、浮いていたということだ。

④では、家の中や外にいる人たちは、魔物に取り憑かれたかのように、戦う気力さえ失ってしまったという。

明るさの表現の仕方や、月からの使者の異様な存在感などが分かりやすくて、物語の世界といえども引き込まれてしまう。

昔の人も、月に誰かが住んでいて、空からやってくることを想像していたのだろうか。

現代の私たちが宇宙人の存在を想像して、SF映画などを制作するように、1100年前もこんな架空のお話が作られたのだろう。

このあと、かぐや姫がどんなふうに月へ帰ったのか、結末まで内容を知っている人は少ないだろう。

子ども時代に読んだ「かぐや姫」のお話は、子ども向けに作られたものであり、『竹取物語』の内容をすべて取り入れてはいない。

興味がある方は、続きをぜひ読んでみるとよいだろう。

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