昭和最後の日

平成最後の日に、昭和最後の日のことを唐突に思い出した。

朝起きるとNHKのニュースで天皇が危篤だという事を知った。何ヶ月も前から病状が毎日報道されていて、中の人は誰も言わなかったけどいつ亡くなってもおかしくなかった。

いつもと同じように原チャリで駅に向かい、自転車置き場から駅まで歩く途中で、信号待ちをしていた車のラジオから鉄琴の音色が漏れ聴こえてきた。旋律が醸す尋常ではない雰囲気に、天皇は死んだと直感した。

都内のターミナルで乗り換えた国電の車内放送では、車掌が控えめなトーンで天皇が亡くなったことを伝えていた。「天皇陛下が…」に続くのが初めて耳にする言葉で、聞き取れなかった。

入口の脇で煙草を吸うと校舎には入らず、新宿駅の方へ歩き出した。こんな日に予備校は授業を行うのか?とは関係なく、出席を「自粛」した。

あてもなく西口と東口を行ったり来たりして、シャッターの開く気配がない小田急の前で新聞の号外を受け取ると、見たこともない大きさの見出しが躍っている。車掌が言っていたのはこれか。

「天皇陛下 崩御」


平成のおわりの今日の空の色は、昭和最後の日のそれとよく似ているんだ。


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