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今月読んで面白かった本【2022年1月】

年末に読んだ本のまとめを紹介したら、わりと好評で多くの人の参考にしてもらえたようなので、もうちょっと頻度を上げて月単位でも紹介したいと思います(読んだ本が少なかった月は翌月とマージします)。

年が明けた1月は23冊ほどの本を読みました。そのなかから、とくに面白かった5冊ほどを今回は紹介します。

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影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか(ロバ−ト・B.チャルディ−ニ)

言わずとしれた、古典の名著。実はまだ未読だったので、ポーカーをやりながらちょこちょこと読み進めました。返報性・一貫性・社会的証明・好意・権威・希少性。それぞれの強力な切り口が人を動かすメカニズムを丁寧に説明してくれます。マーケティング理論のエッセンシャルが凝縮されております。どれもこれも、人間の認知的資源の限界を突いた仕組みで、人間の根本理解にもつながると思います。あらゆるビジネス本がこの本を傍証しているのが分かります。

一方、去年に感銘を受けたベストオブベスト本『Humankind 希望の歴史』の内容を今一度思い返すならば、『影響力の武器』でエビデンスとして並び立てられている社会心理学の実験群のそれぞれの結果を鵜呑みするのではなく、あくまでも批判的な目から吟味する必要があるでしょう。

Hit Refresh マイクロソフト再興とテクノロジーの未来(サティア・ナデラ、 グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ)

全IT起業家必読の本だと思いました。インド人として三人目のMicrosoft社長になったサティア・ナデラの頭の中。人工知能、複合現実、量子コンピューティング。テクノロジーの進展で刻々と変わる世界地図を見据えながら、大企業の変革に挑む彼の哲学がこれでもかと言語化されています。彼が成人になるまで生まれ育ったインドの原風景、両親からの教え、アメリカへ渡ってから駆け抜けた日々。エンジニアでありながら、哲学や文学への造詣も深く、その思索を最先端テクノロジーで激変していく社会にも位置付けながら、マイクロソフト再興の舵取りに挑む挑戦が描かれています。

進化思考――生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」(太刀川英輔)

圧倒的読書体験でした。粗製濫造される本とは一線を画す、探究の塊のような書。気合の入った洋書を読み終えた読後感すらあります。「変異」と「適応」の二軸で進化のメカニズムと本質をオリジナルな視点で読み解いていく。創作に限らず、生き方のヒントにもなる。勇気をもらえる一冊です。

起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男(大西康之)

数年前に発売された『江副浩正』飛び抜けて面白かったけれど、本著も引けをとらない。まさか江副さんが、リクルートが、Amazonを創業する前のジェフ・ベゾスと深い関係を持っていたことについては初めて知った。改めてリクルート事件の顛末と深層を知ると、当時の時代背景や魑魅魍魎と付き合わざるを得なかった経済状況が窺い知れる。そういえば、ベゾスといえば昨年末に刊行された『Invent & Wander』も面白かったです。

アマゾン上場以来、ベゾスが株主に宛てて毎年書き続けた手紙と、発見録などをまとめた一冊。目先じゃなくて未来を、変わるものより変わらぬものを、データじゃなくて直感を、創業時から現在まで一切ブレない行動原則が明快すぎた。カッコいい。

東大卒、農家の右腕になる。――小さな経営改善ノウハウ100( 佐川友彦)

この本は大きく二つの構成によって作り込まれた本です。A面は佐川さんが鬱から回復していく物語。B面は無数の小さな改善を愚直に実行していくTips集で、すべてのスモールビジネスに通じるヒントが詰まってる。個人的には東大を出て、外資系企業で心を壊してしまってから、農家の右腕として再生するまでのプロセスに感動しました。人は挫折からいつだって立ち直れる。たった一年間で人はどこまでも落ちていくし、どこまでも天高く飛翔することができる。

最近どっぷりとハマり込んでいるYouTubeチャンネルの街録をみていると、一人の人生に詰まったドラマに引き込まれ続ける。当人にとったらちょっとしたこだわりだったりスタンスなのかもしれないけれど、その実践の積み重ねが、明日の景色へと誘っていることに遡及的に気づかされる。偶然が必然であることに。

たとえば、勝俣州和さん回の後半で、何気なく発せられる一言に、なぜ勝俣さんが芸能界の第一線でこれほど長きに渡ってサバイブし続けているのかの答えがある。「今日という日を楽しもう」と思えなくなったら終わりだし、それさえ忘れなければ咲き続けられる。「金欲も物欲もないけど、出会い欲はある」って本心なんだろうし、心底素敵なマインドだと思う。

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今回は5冊だけ紹介しましたが、今月読んだ本のリストは以下です。すべての本は読み終わったあとに、ツイッターブクログで一言の感想をつけてログを残しています。

Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章(ルトガー・ブレグマン)
生きるとは、自分の物語をつくること(小川洋子、河合隼雄)
反省記―― ビル・ゲイツとともに成功をつかんだ僕が、ビジネスの“地獄”で学んだこと(西和彦)
どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか(みうらじゅん、リリー・フランキー)
躁鬱大学―気分の波で悩んでいるのは、あなただけではありません―(坂口恭平)
英語日記BOY(新井リオ)
運を支配する(桜井章一、藤田晋)
生涯投資家(村上世彰)
池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」(池上彰)
超思考(北野武)
パン屋再襲撃(村上春樹)
デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場(河野啓)
マグロ大王 木村清 ダメだと思った時が夜明け前(木村清)
自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義(ブライアン・R・リトル)

なにか気になるものがあれば、ぜひ読んでみてください。


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