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梅日記

5月下旬


最近気になるのは、スーパーで売っている梅。

仕事を辞めて、体調も良い日が増えてきた。
丁寧な暮らし、とまではいかないまでも、
生活の端々でおざなりにしてきたものを拾うことができて、最近は心穏やかに暮らすことができている。

仕事をしているときは、
こんな大量の梅、スーパーで買う人いるのかなぁ
なんてぼんやり思って通り過ぎていた。

きっかけはなんだったか。
noteで梅仕事の記事を読んだのが先か、
昔祖母が梅ジュースを作ってくれたのを思い出したのが先か。

祖母は私が実家にいたころ、近所に住んでいたこともあってか、
梅干しやら、味噌やら、
梅ジュースやら、梅酒やら。
とにかく色々なものを手作りしておすそ分けしてくれていた。
その中の梅シロップがとても美味しかった記憶があった。

時間ができた今、それを作りたい、と思うようになった。


梅仕事をしてみたい。

そう思って梅を見るようになった。

だが、1kgという量。
この量に圧倒され、買うことができなかった。

普通の家庭で1kgのものはそうそう買わないと思う。
砂糖とか味噌くらいだろうか。

だが、調べてみると、
1kgは梅仕事の中では最小単位に近いことがわかった。

そうか、これで最小か…。
それはそれで怖い気もする。

梅は青かった。


6月上旬

梅の量に怯えて買うことができないまま、
6月に入った。

本州は梅雨である。
梅雨、という文字を目にして、
ああ、梅仕事の季節だ…と思いを馳せる。

梅が気になりだしてから、
梅仕事について、色々調べてはみた。

だがどうも、調べても調べても
踏ん切りがつかなかった。

ずっと迷っていた。

無理だ、と諦めることもできず。

かと言って、
やろう!と思い切ることもできず。

そもそも1kgの梅からどれほどのシロップ、梅酒ができるかも分からないし、それを2人で消費し切る自信がない。

ああ、やってみたい。
でも大変そう。

そうこう思っているうちに、
スーパーで売っている梅は
黄色く色づいた、完熟梅になっていた。


6月中旬

noteでも記事を探して読んだ。
本格的にやっている人、
初めてやっている人、
色々な人が梅仕事をしていた。

羨ましかった。

色々な記事を読んで、気づいたのが、
梅と氷砂糖は並んで売っているけれど、
広口瓶はどこで入手すれば良いのか?
ということだ。

梅を買っても、瓶がなければ浸けられない。
うーん。どこへ行けば売っているのだろうか…?

瓶が入手できたら梅仕事をしてもいいかもしれない。

でも見つけてしまったら、
やらない言い訳がなくなってしまう。
それならやってしまえばいいのだけれど、
ああ、ああ。どうしようかなぁ。

そう思いながら、またスーパーで売られている梅の前を通り過ぎる。

梅の値札には、
とうとう超完熟梅と書かれるようになっていた。


6月下旬

この頃には、もう腹を括っていた。

1ヶ月もやりたいのだ。
これは出来心ではない。多分私は本気でやりたいのだ。

タイミングがあったら迷わずやろう。

旦那にも相談した。

本当は梅酒を作りたかったが、
私はお酒に強い方ではない。

梅酒はお酒の中で一番好きだが、
3ヶ月に1回くらい100mlも飲めない。

「お酒だと余してしまうから、
 作るならシロップがいいのでは?」
という助言を旦那にもらった。

いつ作ることになってもいいように。
そう思って、色々調べ続けた。

その中でわかったのだが、
シロップを作るのにメジャーなのは青梅だということだ。

完熟梅でも作れるが、超完熟梅はあまり向かないらしい。

この頃スーパーで目にするのは黄色い超完熟梅。

仕方がない。今年は縁がなかったんだ。
来年、青梅を見つけたら迷わずやろう。
そう、心に決めた。

うだうだしている間に、梅の季節は過ぎ去ろうとしていた。


7月上旬

お気に入りのちょっと遠いスーパーに卵を買いに行った。
この頃、卵が手に入らないのだ。

このスーパー、出口にも商品が置いてあるので、
時々会計後に安い商品を見つけ、
ああ、買いたかった…
となることが時々あるので注意が必要だ。

でも、この日は卵が欲しいだけだったので、
無駄なものを買わないように、
あちこち見ずに会計を済ませて出口を通った。

その出口で見つけてしまった。

この季節もう売っていないと思っていた、
青梅が陳列されていた。


ご丁寧に氷砂糖、梅酒用のお酒まで並んでいる。

梅の季節は終わっていなかった。


悩んだ。次に青梅を見たら買うと決めていた。
でもそれは来年の話で…。しかも瓶もないし…。

そこで帰り道の途中にある
ドン・キホーテに行くことにした。

もしかしたら瓶が売っているかもしれない。
まあ、売っていなかったら諦めよう。

クールに思考を回していたつもりだったが、
心は興奮していた。


果たして。


ドン・キホーテに瓶は売っていた。
ご丁寧に果実酒用広口瓶と書いてあった。
紛うことなき、梅仕事用の瓶である。

瓶を買い、スーパーに戻り、
青梅と氷砂糖を買った。


やってしまった…。とうとうやってしまった…。

もう逃げられない。


1ヶ月悩んだ衝動買いだった。


梅仕事

青梅だったので、アク抜きをした。
4時間ほど、水にさらすとアクが抜けるとのこと。

1晩と書いている記事もあったが、4時間と書いている記事が多かったように感じたので、従うことにした。
アク抜きを書いていない記事もあったので、多分大丈夫だろう。

アクを抜いている間に瓶を消毒。
煮沸消毒ができない瓶だったので、
(もしできたとしても大きすぎて入れる鍋がなかった)
食品用アルコール消毒を買ってきた。

4時間後、梅を丁寧に拭く。
私はアトピーなので、
梅にも私の肌にも良くないかと思い、
ビニール手袋をしようか迷った。

だが、水気を完全になくすという繊細な作業をするにはビニール手袋は向かないのと、梅を肌で感じたいと思い、丁寧に手を洗って梅仕事に臨んだ。

梅はしっかり実は硬かったが、
なんだかシルクのようにしっとり柔らかな肌触りだった。
直に触ってよかったと思った。

水気を拭き取り、ヘタを取る。
時間がかかるかと思ったが、1kgはそれほど恐れる量ではなかった。
そのまま氷砂糖と青梅を交互に瓶へ入れていく。

1時間ほどですべての工程が完了。

達成感はあるものの、意外と簡単だった。

だが、うまくいったかどうかはこの時点ではわからない。

ドキドキしながら毎日瓶を揺すった。


味見

12日目。
早ければ10日で飲めるとのことだったので、
様子見で味見をしてみることにした。

この頃に梅はしわしわになっていた。

蓋を開けてまずは匂いを確認。
すごくいい香りがする。

失敗はしていなさそうだし、なんなら美味しそう。
こんなにいい香りがすると思っていなかったので、びっくりした。

コップに少量取り、旦那と味見をする。


お!ちゃんとおいしい!

すごいねぇすごいねぇと2人で大興奮。

まだ氷砂糖が溶け切っていないので、
完成ではないが、経過は順調。

とても安心した。


完成

味見をした時点でで完成!
としても良かったのだが、
梅シロップの完成は、
氷砂糖が溶け切った時になるようなので、
1ヶ月ほど氷砂糖が溶けるのを待つことに。

だが、氷砂糖がなかなか溶けず…

底の方に多くはないのだが、
しぶとく溶け残りが。

あんまり待って失敗するのも怖かったので、
1ヶ月ほど経った時に蓋を開けてみる。

梅のいい香りの中に、
ほんのりバナナのような香りが。
多分少し発酵してしまったのだろう。

ギリギリだったようだ。
週末を待って、開封。

800mL〜1Lほどできるようなので、
事前に800mL分は瓶を買っておいた。
100均なのだがおしゃれで可愛く、
煮沸消毒ができるガラス瓶だ。

シロップは加熱処理をして、
密封で冷蔵庫保存だと1年も持つらしい。

加熱のために鍋にシロップを移す。
結構な量がある。いい香りもする。
少し味見をすると、美味しかった。

だが鍋に開けたシロップを見て、
800mLに収まらなそうに感じた。
慌てて家にあったプラスチックのボトルを
アルコール消毒をしておく。

加熱する時点で風味はある程度飛ぶのだが、
沸騰させると風味が飛ぶので良くないらしい。

瓶を開けた日は気温が最高34℃の日だった。
暑い中、換気扇をつけて鍋の前に立つ。
なかなかのハードな作業だが、
これで完成と思うと少しわくわくしていた。

シロップのアクを取りながら15分。
瓶に詰める前に冷まさなければいけないが、
気温的に冷めるのか心配だったので
保冷剤などを鍋底の当てる。

冷めたシロップを瓶に詰めていく。
案の定、買っていた瓶だけでは足りなかった。

なんとか用意していたプラボトルも
合わせることで収まった。

加熱すると風味が飛ぶので、
1本だけ未加熱で保存。

大体1.2Lくらいのシロップが
出来上がったようだった。

完成したシロップを炭酸で割り、旦那と飲む。

すごく美味しい!!

ああ、この味のために1ヶ月頑張ってきたのか。

若干発酵してしまったが、
全然美味しく飲めるし初めてにしては上出来だ。

とても感慨深いものがあった。


来年もやろう。

そう思った。



番外編:残った梅の活用法

残った梅をどうしようかと考えた。

シロップから出した梅は
そのままは食べられない。
事前に活用法があることは調べてはいたが、
そこまで頑張るか悩んだ。

シロップだけでも十分では…。

そう思ったが。

暇だった。
シロップが冷めるまですることがない。

まあダメでもともと。

そう思って梅ジャムを作ってみることに。
梅の実を種から外していく。
これがなかなか根気のいる作業。
梅は水分が全部出てしまっていて固い。

こんなのを取って食べられる量になるのだろうかというくらい、1つの梅から取れる実は少ない。

だが、梅はもともと1kgあったのだ。
きっと集めたらそれなりの量になるのだろう。
根気よく続けた。

かくして。
全部合わせて180gになった。
用意していた器はいっぱいになってしまった。

私の感覚的に無視するには
ちょっと多い量が取れてしまった。

調べたレシピ通り、作ってみることに。

まずは梅を柔らかくなるまで水から煮る。
最終的に食べられるのだから、と思い、
今の状態を知りたくて
少し煮る前の実を食べてみる。

美味しくない!固い!!

これが美味しくなるのか…?

またまた暑い中、鍋の前に立つ。
今度はぐつぐつ煮るので明らかに暑い。
本当に柔らかくなるのか半信半疑で煮続ける。

そんな中でぼんやり考える。
180gの梅、その半量の砂糖、水を加えると、
200gぐらいのジャムができてしまうのでは…?
それは消費できるのだろうか…?

水の加減がわからなかったので、様子を見つつ
煮ること十数分…

ヘラで押している梅の感触が柔らかくなった。
食べてみても柔らかい。

柔らかくなるんだ!なんて思いながら砂糖を足す。レシピには梅ジャムはゆるめに作るといいと書いてあった。ジャムを作ったことがないので、
加減がわからないが、まあこんなものだろうと。

色は綺麗ではないが、
味は美味しい梅ジャムが大量に出来上がった。

そして煮る前に食べた梅と全く違って
すごく美味しい。

旦那にも好評だった。

諦めて捨てなくてよかった、と思った。



あとがき

筆の赴くままつらつらと書いていたら
とても長くなってしまいました。

ここまで読んでくださり、
ありがとうございました。

梅仕事は思っていたより、
ずっと楽しく、ずっと美味しかったです。

今年の教訓を活かし、
来年に繋げられたらと思っています。

このnoteを読んで梅仕事をする人が
増えたら嬉しいです。

本当にありがとうございました。

奏弥 流

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