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アートアニメのオマージュ

僕が初めてRADWIMPSを知ったのは、TSUTAYAの店頭のモニターで流れていた『君と羊と青』のMVだった。ひと目見てすぐ、伊藤高志さんの実験アニメーション『SPACY』(1981)のオマージュだと分かった。『SPACY』自体、居田伊佐雄さんの『オランダ人の写真』(76)、松本俊夫さんの『アートマン』(75)の影響を見て取れる作品である。そこで用いられた実験的な技法や視覚的な面白さを踏まえつつ、エンタメとしてより見やすい作品へと昇華したものが『SPACY』だと言えるかもしれないが、そこからさらに見やすく面白く進化させたのが『君と羊と青』であった。実に素晴らしいMVで、曲もかっこよかった。

昔友人の家に遊びに行った時に、友人が持っていた『志村けんのだいじょうぶだぁ』のビデオを見せてもらったことがある。その中に、お隣さん同士である志村さんと桑野さんが敷地の境界線からはみ出たのはみ出ないので揉めるというコントがあった。2人は口論し合い、次第に水を掛けたり卵をぶつけたりして争うようになる。明らかに、ノーマン・マクラレンのアニメーション『隣人』のパロディだった。アカデミー賞の短編アニメーション賞も受賞(1952)した名作ではあるが、当然日本ではそんなに認知されているわけではない。志村さんご自身の案なのか制作チームの持ってきたアイディアなのかは分からないが、いずれにせよネタ探しのアンテナの広さに感嘆したものだ。

人類の創作の歴史は2000年に及び、世の中は様々なオマージュやパロディに溢れている。パクリとオマージュの境界線は?なんて無粋な議論で炎上したりすることもあるけれど、個人的には、元ネタを知っている人だけが追加でニヤッとしたり感心したり出来る、素敵なボーナストラックのようなものだと思っている。『モンスターズインク』を見ていて、寿司レストラン『ハリーハウゼン』の看板に気づいてニヤッと出来るという特権。教養というのは、こういう特権を味わうためにあるのかもしれない。当然映像だけではなく様々な分野でオマージュやパロディがあるわけですが……それはまた別のお話、いつかまた別の時に話すことにしましょう。

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