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週末読書メモ116. 『百年の孤独』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

溢れるような、むせかえるような物語の凄み。そんな読後感のある傑作。


タイトルの印象、そして、読んだ人々からただならぬ感想から、手に取ることを拒むことが出来なかった小説『百年の孤独』。

南米が生んだ19世紀における名小説家、ガルシア・マルケスの代表作。

読後、呆然と、しかしながら、虚無ではない不思議な満足感が残る作品となっています。


蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら…。

この物語は、マコンドという村における開拓者一族、および、その場所の勃興から隆盛、そして混乱から衰退、消滅までの100年の軌跡。

物語の主役となる開拓者一族ブエンディア家の人々。個性溢れるこの一族が共通して抱えているのが、深い孤独。救いようのない孤独・深淵の中で、人々が織りなす濃密な歴史が1冊の中に詰められてます。


「解説(梨木香歩)」
ガルシア=マルケスの小説を読むといつも熱帯の気配の充溢を感じる。時間と空間を猛スピードでアクロバティックに移動するジェットコースターにのり、次々にやってくる膨大な情報量の波に打たれ、呑み込まれ、くぐり抜ける恐怖と快感。こういう圧倒的な語りを前に、一体どういう「解説」が可能なのだろう。全く途方に暮れてしまう。

我が意を得たりというコメント。『西の魔女が死んだ』で有名な梨木香歩さんの解説の通りで。全く途方に暮れてしまいます笑

470ページある内容のうち、450ページは、ほぼ終始、暗澹とし、混乱に満ちていながら、謎のスピード感と熱量を持って流れていくブエンティア家とマコンドの歴史。どういう感情を向き合って良いか分からない中で、最後の20ページは、ジェットコースターのような怒涛の終焉。

こんな物語は、初めてでした。


シェイクスピアのようなテンポや快活さはなく。

ドストエフスキーのような緻密さと壮大さとも違い。

少し似ているのが、村上春樹さんのような(でも、村上春樹さんの登場人物の方がまだ希望を持っている)。

同じ文豪家であっても、ここまで違うテイストで、けれども、感服せざるを得ない物語があるのかと。


トルストイの作品も、ガルシアと同様にテーマは歴史と人でした。

世間で取り上げられる極一部の英傑達によってではなく、歴史以上に名も無き人々によって、歴史は折り重なっていくことが心に刻むことができるのが『戦争と平和』という名作。

『戦争と平和』を歴史のB面だとしたら、『百年の孤独』はまるでC面のような。B面以上に表には出ない、けれども、確かに存在する人と場の歴史・人間模様が、この本には凝縮しています。

人間は見たいものしか、見えているものしか見えていない、という真理を見せつけられるというか。

目の前のことに向き合うのは大切、未来もつくることも大切。その上で、未来の物語を描くためにも、無知の知を自覚し、外の世界へ踏み込む重要性。

偉大な物語は、未知なる世界への扉になること。それを再確認できるような凄み、深みのある怪作です。


【本の抜粋】
「なんだ!」彼は叫んだ。「マコンドは、海に囲まれているのか!」
(中略)「わしらは絶対に、どこへも行けそうにないぞ」と、ウルスラをつかまえては愚痴った。「科学の恩恵にもあずからずに、ここで、朽ち果てることになりそうだ」。

彼女は驚いた素振りも見せずに、こう答えた。「この家の人間はみんなそうなのよ。生まれつきおかしいんだわ」。時がこの混乱にけりをつけた。人騒がせなゲームのなかでアウレリャノ・セグンドに落ち着いたほうが祖父によく似た巨漢に、そして、ホセ・アルカディオ・セグンドに落ち着いたほうは大佐そっくりのやせぎすな男に成長し、たがいに似ているところは、一家の者がみなそうだが、どことなく淋しげな感じだけになったのだ。

同じ血でつながったふたりの男のこの接近は、およそ友情からはほど遠いものだったが、彼らを引き離しも強く結びつけもする計り難い孤独を耐えていくのには役立った。

ブエンディア家の者の心は、彼女にはお見通しだった。百年におよぶトランプ占いと人生経験のおかげで、この一家の歴史は止めようのない歯車であること、また、軸が容赦なく徐々に摩滅していくことがなければ、永遠に回転しつづける車輪であることを知っていた。

孤独な恋人たちは、幻滅と忘却の砂漠へ押し流そうと無益な努力を重ねる、頑固で不運な最後の日々に逆らいながら生きていた。

一族の血を絶やすまいとして自然の掟と戦うウルスラ、偉大な文明の利器という夢を追いつづけるホセ・アルカディオ・ブエンディア、ひたすら神に祈るフェルナンダ、兵戦と魚の金細工のなかで呆けていくアウレリャノ・ブエンディア大佐、ばか騒ぎのなかの孤独に苦しむアウレリャノ・セグンド。彼らの声をまざまざと聞き、激しい執念は死よりも強いことを知った。

百年の孤独を運命づけられた家系は二度と地上に出現する機会を持ちえないため、羊皮紙に記されている事柄のいっさいは、過去と未来を問わず、反復の可能性のないことが予想されたからである。

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