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北海道和菓子文化の謎に迫る!vol.1〜千秋庵編〜

北海道が大好きです。北海道といえば洋菓子でしょ〜!と私も行くまではそう思っていました。ところが!いざ行ってみると、意外にも和菓子がめちゃくちゃ多い〜!!!!!

あずきの生産量が1位だし、考えてみればそうか…とは思いつつも、日本でありながらも独特な文化を持つ北海道、どうやって和菓子文化が浸透していったのか知りたくなりました。

北海道のお菓子屋さんは多くが和菓子と洋菓子のどちらも取り揃えていて、(なんならパンが売ってる店も結構ある)他の地域ではなかなか見られないような和と洋がうまく調和したようなお菓子もよく見られます。

北海道の和菓子はどのように生まれ、根付いたのか、一つずつ紐解いていこうと思います。

🧸千秋庵って知ってる?

今回は北海道にある和菓子屋さん、千秋庵(せんしゅうあん)について調べていきます。北海道の和菓子文化をつくったのは千秋庵だと言っても過言ではありません。なんて言いつつ、私も3年前、北海道に行くまで千秋庵の存在すら知りませんでした。

千秋庵は札幌と函館にある和菓子屋さん。札幌の方は「札幌 千秋庵」、函館は「千秋庵総本家」となっています。どちらも名物は「山親爺(やまおやじ)」という洋風せんべい。その他それぞれ和菓子・洋菓子どちらも製造しています。(お菓子については後ほど詳しく)

🧸お菓子カリスマ「松田咲太郎」さん

歴史を辿ると、もともとは函館から始まった千秋庵。創業は1860年、秋田藩士だった初代・佐々木吉兵衛さんが、日米和親条約によって開港し、多くの人で賑わっていた函館にわたり菓子売りを始めたのがきっかけなんだそう。現在も続いているお店としては、北海道最古のお菓子屋さんです。ちなみにお店の名前、「千秋庵」は初代の出身地・秋田の「千秋園(今の千秋公園)」に由来しています。

函館千秋庵の3代目の時に経営が悪化、東京・塩瀬(創業660年を超える老舗和菓子店、日本の饅頭発祥のお店)で工場長をしていた、松田咲太郎さんが4代目を継ぎ、数々の銘菓を考案しました。松田咲太郎さんは今も上生菓子でよく見られる「鋏菊(はさみぎく)」を考案していたり、「和洋菓子製法講習書」という当時の最先端の本を書いていたりと、お菓子業界のカリスマでした。

さらに、東京で松田咲太郎さんから教えを受け、高く評価されていた岡部式二さんは小樽千秋庵で工場長を務めたのち札幌千秋庵を創業、当時札幌にはまだなかったシュークリームやスイートポテトなどを販売したそうです。

🧸北海道中に広がる千秋庵

こうして、道外からやってきた職人たちの知識と技術、北海道の材料が組み合わさり、北海道のお菓子文化が生まれ、各地に広まっていきました。

1894年 函館から独立、小樽千秋庵が誕生(1995年に廃業)
1919年 函館から独立、旭川千秋庵が誕生(2008年に廃業)
1921年 小樽から独立、札幌千秋庵が誕生
1929年 函館から独立、網走千秋庵が誕生
1933年 札幌から独立、帯広千秋庵が誕生(1977年に六花亭へ)
1934年 函館から独立、釧路千秋庵が誕生(1990年に札幌千秋庵と統合)

1968年に発売された「日本名菓辞典/守安正」には北海道の銘菓として小樽千秋庵、帯広千秋庵、札幌千秋庵の名前がずらりと並び、各千秋庵の勢いがあったことがわかります。

🧸洋風せんべい「山親爺」と「どら焼き」

千秋庵を代表するお菓子、「山親爺(やまおやじ)」は小麦粉にバター、水の代わりに牛乳を使った洋風なお煎餅で、1930年に誕生しました。ちなみに「山親爺」はヒグマの愛称。山親爺の表面には鮭を背負ってスキーをするクマの姿が描かれています。(かわいい!)このお菓子も松田咲太郎さんが考案し、各地の千秋庵に伝授しました。

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さらに松田さんはどら焼きも作り始めます。(東京時代にすでに教えるほどの腕があったんだそう)北海道に行った時思ったよりも「どら焼き」を銘菓としているお店が多いな、という印象があり、千秋庵から生まれたどら焼き文化は少なからず影響してそうです。

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こうして千秋庵の銘菓が誕生し、受け継がれていきます。そういえば、網走の千秋庵に行った時、訪れるお客さんがみんなどら焼きをたくさん買っていたのを思い出しました。

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🧸帯広千秋庵から六花亭へ

そして、札幌から独立した帯広千秋庵は六花亭に。六花亭へと名前が変わった記念として誕生したのがあの有名な「マルセイバターサンド」なんです。(あのちょっとフニャッとしたクッキーと濃厚なバタークリーム!!!苦手だったレーズンを克服したのはこのマルセイバターサンドのおかげです。)

北海道に行って、六花亭にも和菓子が売っていたときはとってもびっくりしましたが、こういう歴史があったんですね。帯広千秋庵時代から人気だったもなか「ひとつ鍋」は今でも販売されています。(お鍋の形をしたもなかの皮にあんことお餅が入っていてかわいい)

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六花亭・基本方針制定
『おいしいお菓子を作ろう 楽しいお買物の店を作ろう みんなのゆたかな生活を作ろう そして成長しよう』

六花亭の基本方針にもあるように、和・洋問わず、楽しくおいしいお菓子を作ることを目指してきた思いが、今の北海道の和洋折衷のお菓子文化に繋がってきたことがわかります。

次回は鉄道とお菓子の意外な関係について調べていこうと思います◎

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参考文献
・ほっかいどう お菓子グラフィティー/塚田敏信
・日本名菓辞典/守安正
函館千秋庵総本家
札幌千秋庵
六花亭
・函館をめぐる冒険/ピープス函館

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