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プロスポーツでトレーナーとして活躍するためには?取得すべき資格などの解説

高校世代のアスリートから、進学に際してトレーナー資格に関する質問がありました。

「トレーナーとして仕事するにはどういう資格が要りますか?」

トレーナー資格は、そういう仕事に携わらない人にとってはよくわからない体系になっていると思います。
同時に理学療法士、柔道整復師、鍼灸師など、トレーナー業に多い資格についてもその差などは一般には知られてはいないでしょう。
では、どんな資格があり、どのような差があるのか、僕が考えるおススメも含めて解説します。

個人の経験から

僕自身も【アスリートをサポート出来る仕事】を目指して理学療法士資格を取るべく進学しましたが、実際アスリートをサポートする(プロを対象として活動する)までには長い時間がかかりました。

いくつか理由はあります。

一つは、サポートしたいと思う対象がアスリートだけではなくなった事。
臨床で理学療法士として働き出すと、リハビリという概念はアスリートが特別ではなく、全ての対象で評価からアプローチという事は全く同じだと言うことに気づかされました。
あとは、地域の問題もあると思います。近隣の地域でプロスポーツがあるかどうかです.

さらなる理由はキャリア形成の問題です。
小さい頃から僕は未来に対するビジョンを持つことが苦手で、やりたい事を漠然と思い描いているだけ、未来への準備が出来なかったのです。
学生時代からプロチームで活動する準備が足りなかったと言えます。
そして、それは僕自身の熱意の問題でもあったと思います。

つまり、単純に【トレーナーとして仕事をする】だけであれば資格云々より、それに対する準備が大事です。
準備とは、【情報】と【行動力】です。

【情報】とは、”どのチームがトレーナーを募集しているか”、や”チームと関わりのある人物”などの情報です。
そこで求められる”̻資格”についても分かります。
募集していないチームにトレーナーとして参加するのは、よほどのコネクションが必要だと思います。

【行動力】これに勝る物はないかも知れません。
チームのフロントもしくはトレーナーのチーフに、直接連絡を取って交渉するなどです。
とにかく積極的にアプローチする事!

【情報】と【行動力】が無いと、プロスポーツでの活動は運頼みか、かなり遠回りする事になります。
ただ、ここで問題となるのは自身をどう評価してもらうかです。

募集しているチームにコンタクトを取れたとします。
そこで自分を認めてもらうにはどうしたらよいか、どのように自分をプレゼン出来るかも重要になります。

ではそのプレゼンとは?
ここでようやく【資格】が活きてきます。
トレーナーとしての活動実績がないのに、資格も無ければなかなか相手にされないでしょう。
そこでなんらかの資格があれば、話を聞いてくれる段階には行けます。


トレーナーとして優位な資格


現状、国内で活動するにあたり優位となるトレーナー資格はなんでしょう?
筆頭は、JSPO(旧;日本体育協会)公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)です。
国体レベル以上の大会では、この資格を保持している事が原則求められます。
また、プロ団体でもこの資格を有している事が望ましい状態でもあります。

ただ忘れてはならないのが、医療資格‘も’求められる流れになっている事です。
理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、看護師などがそれに当たります。
今後はほとんど、JSPO−ATと医療資格のダブルライセンスが必要となるでしょう。


海外事情


ここで海外の話を少しだけ、大学同期のアメリカでトレーナー活動後、理学療法士として勤務している知人からの話を元に解説します。

先に紹介した学生も、『トレーナーになりたければアメリカに行け』と言われたそうです。

確かに海外での活動は、ハクが付きますがアメリカで公認のアスレティックトレーナー(ATC)を取得しても資格としてはあまり意味のないものになるでしょう。
事実JSPO−AT講習の同期も、ATCを取得しているJリーグトップチームのトレーナーがいます。
つまり、日本での活動にはJSPO−ATを取得する事が好ましいという例です。

さらにアメリカでのアスレティックトレーナーの活動は、ほとんどが応急処置です。
フィジカルトレーニングやリハビリの部分への関わりは少ないようです。
アメリカで活動したからといって、質の高い能力が身につくわけではありません。
さらに言うと、日本人がトレーナーとしてアメリカで勤務しても、時給10ドル程度、日本円に直しても時給1200円です。
一方理学療法士では、時給40ドル、4000円にはなる計算です。

この現状を踏まえると、トレーナー資格を取得するのにアメリカに行くのは費用対効果としては少し物足りないと言うのが、僕の意見です。
留学する熱意があり、医療系でトレーナー活動を考えるなら海外で【理学療法士】免許を取得する事を間違いなくおススメします。

国内で取得出来る他の資格だと、NSCAのCPT及びCSCS、あとは国内のいくつかの団体が認定を出しているトレーナー資格はありますが、高い質を保証する段階ではないため一定のレベルで活動するにはほぼ意味のない物と考えられます。

ここまでのまとめ

・今後トレーナーとして高いレベルで活動するには医療資格とJSPO−ATの取得が必須となる。
・海外行くなら理学療法士免許の方が断然良い。

取得する難易度は?

取得難易度は、取得する順番にもよります。

JSPO−ATの取得は、養成講習を免除される大学や専門学校を卒業する(免除適応コース)か、社会人枠として2年間にわたる養成講習を受けて、試験に合格する必要があります。
医療資格については、養成校を卒業後、国家試験を突破しなければなりません。

JSPOーATの取得で壁があるのは、
・免除適応コースの試験合格率
・要請講習会の受講待ち年数 
があります。       

近年JSPOーAT試験の合格率はだいぶ上がりましたが、それでも全体で30~40%。
免除適応コースではさらに低いです。
要請講習会を経ている人では今では50%程度でしょうか。

免除適応コースにとってはJSPOーAT試験は難しいと思います。
本来あってはならない事ですが、現役の医療資格保持者でも不合格者が何人もいるくらいです。

AT養成校に入るのは簡単ですが、試験合格は難易度が高くなります。

では、要請講習会からの試験はというと、
この講習会に参加するのが難しいのです。
講習会に参加するには、各スポーツの連盟や協会などか、各都道府県の体育協会から推薦を受ける必要があります。
他の団体からも推薦枠はありますが、余程の実績がないと難しいです。

推薦を受けるのもただ手を挙げれば推薦を受けられる訳ではなく、その団体での実績がないと推薦を出してくれません。
その団体での活動も必要になります。

さらにこの推薦枠はほとんどが各団体から年に1人ずつで、全体では年間100人という枠しかありません。
各団体で推薦を受ける‘待ち’が発生しています。
基本的には【待っている人数】=【待つ年数】になりますので、‘待ち’が3人いれば推薦をもらうのも3年待ちになります。

また講習会自体が、1日~1週間の講習会が7回程度あります。
ほとんどが東京でありますので、ライフスタイルによっては別途費用や仕事に差し障る事が考えられます。

医療資格はどうでしょう?
学費と最低でも3年の就学が必要ですが、
現在養成校は沢山ありますし、学内である程度勉強すれば国家試験もさほど難しくはありません。

では、医療資格のオススメは??


ATでよく持っている医療資格は、
・理学療法士
・鍼灸師
・柔道整復師
が多いです。

それぞれのメリットを概説します。

・理学療法士
基礎医学に強い。
解剖・運動・生理学が基盤にあり、スポーツに応用が効きやすい。
就職に強い

・鍼灸師
鍼が打てる
単独で鍼を打つことが出来るのは、医師以外には鍼灸師だけです。

・柔道整復師
開業に強い
固定方法を基礎的に習得している

将来病院で働きつつトレーナー業を行うなら理学療法士が良いでしょう。
フリーランスでやりたいなら、柔道整復師か鍼灸師です。この2つはそれぞれのメリットによります。

僕からの医療資格としてのオススメは【看護師】です。
看護師のメリットは、病院での立場が良いです。
就職にも困りません、どこの地域でも就職出来ます。給料も他の医療資格より優遇される事が多いです。
医師の指示さえあれば出来る事がかなり多いです。
トレーナー業に多い出血などの応急処置も得意です。
デメリットとしては、開業に向かない事とトレーナーとして携わるには、勉強し直す必要が多い事でしょう。

どの資格にしても、しっかり勉強する事が必須です!

以上が、トレーナーとして活動するために必要な事柄です。
資格の‘価値’は、今後変化しますし、資格自体がキャリアになる時代でもなくなってきています。
自身のキャリアをどう形成していくか、自身の価値をどのように見出だすかも必要になります。

何をするにしても【熱意】はとても大事ですから忘れないように原点にしましょう!

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