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『グアテマラの弟』片桐はいり/読書感想文

海外旅行が好きだ。
大学生になると、アルバイト代を貯めたり、小さいころからのお年玉を使って、いくつかの国を旅した。

見たことのない風景、
食べたことのない料理は、私を魅了した。
それまで関西から出たことがなかった私は、
とにかく、それらをどんどん新しく経験したかった。

だけど、そこは若者の旅行。
ほとんどの国では、添乗員やガイド付きのツアーだった。
観光化され、マニュアル化され、磨き上げられた、その街の外面を見せられてたんだろうなぁと、最近はなんとなく思うようになった。
私が不勉強で、ちゃんと内側まで見ようとしていなかったこともある。

もちろん、あの頃はそういうものを見てまわりたかったのだ。

世界遺産をどれだけ多く見たか、が、
私自身が世界をどれだけ広く知っているかの象徴であるような気さえしていた。
特に事前に勉強もせず、知識もなくとも、
とにかく見さえすれば、条件クリアだ。

実に若く、広く浅く、浅はかだった。


旅のしかたが変わったのは、
コロナ禍になって、県内の旅行ならばOKという風潮になり、
家からでも1時間くらいの距離にある鎌倉や箱根に、たびたび泊まるようになってからだ。

ガイドブックは持たずに、
ふらふらと散歩にでかけ、
街の本屋に行って本を買って部屋で読み、
ぼーっと海や空を見て過ごし、
地元の人が通う店で夕食を取る。

暮らさないと見えてこない風景や、
人々の生活や、文化がある。

今度は、外面じゃなくて、
そういうものを経験する旅がしたい。海外でも。



だから、
海外に肉親がいて、
その家に遊びに行く。

それは、まさに、
今の私の憧れの旅行スタイルなのだ。

片桐はいりさんの『グアテマラの弟』は、
片桐さんの独特の視点を交えながら、
そうそう経験できない、旅行のスタイルを私たちに見せてくれる。


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