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規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書を日弁連が厚労大臣等に提出

厚生労働省は今年(2022年)7月15日に「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」が公表された。そして、この報告書に基づき厚生労働大臣諮問機関の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会では議論が始まっているが、2022年10月19日に日本労働弁護団が「これからの労働時間制度に関する検討会報告書に対する意見書」を、また日本弁護士連合会(日弁連)が「裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書」を各サイトで公表。

規制強化も含む裁量労働制見直し意見書の趣旨

2022年10月19日、日本弁護士連合会(日弁連)は「裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書」を取りまとめ、同日に厚生労働大臣及び労働政策審議会(労政審)労働条件分科会に提出したことを日本弁護士連合会サイトで公表。

なお、この意見書の趣旨は「政府は、『裁量労働制実態調査』の結果を踏まえ、裁量労働制の検討において、裁量労働制の問題点を克服するための規制強化も含めた見直しを検討すべきである」とのこと。

規制強化も含む裁量労働制見直し意見書の理由

厚生労働大臣と労働政策審議会(労政審)労働条件分科会に提出された日本弁護士連合会(日弁連)「裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書」を読むと、意見の理由として5項目の理由が記載されている。 

1 労働時間規制の意義と例外としての裁量労働制
2 裁量労働制実態調査と検討会の開催
3 本件実態調査結果から明らかになった問題点
4 裁量労働制の正しい適用の在り方
5 規制強化も含めた見直し検討の必要性

規制強化も含めた裁量労働制見直し検討の必要性

日本弁護士連合会(日弁連)は意見書(裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書)において意見理由の5番目の項目として「規制強化も含めた見直し検討の必要性」をあげ、「裁量労働制の見直しに向けた検討においては、本件実態調査結果を踏まえ、裁量労働制の問題点を克服するための規制強化も含めた検討がなされるべきである」と。

5 規制強化も含めた見直し検討の必要性
上記のとおり、裁量労働制は、高い専門性を有する労働者を適用対象として、本当に業務遂行・時間配分の裁量性を有し、待遇面においても十分と言える状況で就労できるならば、使用者側にとっても労働者側にとっても有意義な制度と言える。
しかし、本件実態調査結果から明らかになった重要な問題は、そのような状
況ではないにもかかわらず裁量労働制を適用されている労働者が確実に存在
し、その結果、過労死ラインを超えるような長時間労働を強いられ命と健康を危険にさらしたり、違法適用や濫用的適用を受けたりしている者が、適用労働者のうち少なくとも1割以上は存在すると十分に推測できる状況にある点である。1割は、規制を強化すべき根拠とするに十分と言える大きな数字である。
裁量労働制には、長時間労働を助長し労働者の健康を害するおそれがある、
時間外割増賃金を支払わないための方便として濫用されやすい、濫用による被害が潜在化しやすい、裁量労働にふさわしくない業務も適用対象とされているなどの問題点がある。今後裁量労働制をどうするのかについて審議をやり直すならば、まず真摯に向き合うべきは、上記問題点をいかにして克服するかである。
そのためには、長時間労働助長傾向への対策として、①使用者による適用労
働者の労働時間把握義務を強化する、②みなし労働時間と実労働時間の乖離が著しい状況が常態化している場合に、遡って適用を認めないことを明文で法制化する、③勤務間インターバルの設定による休息を確保する、④深夜労働の回数を制限するなどの、規制強化も含めた検討が必要である。また、違法適用や濫用的適用への対策としては、⑤違反事例における企業名公表制度を法制化する、⑥適用対象労働者の要件として対象業務経験年数を入れる、⑦専門業務型においても企画業務型においても、本人同意を適用要件とし、不同意の場合の不利益取扱いの禁止も明文化する、⑧適用対象業務が裁量労働制の適用にふさわしいかを再検討し、システムエンジニア業務をはじめ、時代の変化により裁量労働にふさわしくなくなった業務を適用対象から除外するなどといった方策の検討が必要である。
さらに、手続面においては、裁量労働制導入のための手続的要件を緩めるの
ではなく、むしろ、⑨手続的要件としての労使委員会決議を、企画業務型裁量労働制だけでなく専門業務型裁量労働制にも課し、労使委員会のチェック機能を強化し、労使委員会の議論が真の意味での労使自治に資するよう、労使委員会を充実・活性化する方向性が検討されるべきである。具体的には、労使委員会において、適用対象労働者が行政通達による定義に従った内容の対象業務を行う労働者であることを個別にチェックし、その上で適用対象労働者に対する対象業務の範囲・定義を書面をもって説明し、そのチェック及び説明を経て、適用対象労働者が個別に同意したことを労使委員会決議の要件とするなどの工夫が行われるべきである。
裁量労働制の見直しに向けた検討においては、本件実態調査結果を踏まえ、
裁量労働制の問題点を克服するための規制強化も含めた検討がなされるべき
である。

日本労働弁護団「これからの労働時間制度に関する検討会報告書に対する意見書」では裁量労働制対象業務拡大議論への懸念が示されているが、日本弁護士連合会(日弁連)「裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書」では対象義業務拡大への否定的意見は特に..........。

裁量労働制実態調査の結果を踏まえ、規制強化も含む裁量労働制の見直しを求める意見書(PDF)

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