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厚生労働省「裁量労働制見直し」とは裁量労働制対象拡大を含む見直しなのか?

結論から言うと、内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議文書の裁量労働制に関する記載が(何の肩書も地位もない者が言っても書いても仕方ないことだが)厚生労働大臣の諮問機関・労働政策審議会の裁量労働制に関する議論を形骸化している。

規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」

昨年(2021年)12月22日、内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議の第12回会議が開催され、「当面の規制改革の実施事項」が公表された。

規制改革推進会議の公表された文書には、厚生労働省は「同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる」と記載されている。

当面の規制改革の実施事項(抜粋)
厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、「これからの労働時間制度に関する検討会」における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる。

ここで「同検討会」とは厚生労働省・労働基準局の有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」(実質的には裁量労働制見直しに関する検討会)のこと。

労働基準法など労働法改正に関しては、厚生労働大臣諮問機関・労働政策審議会で議論する決まりだが、総理大臣諮問機関・規制改革推進会議文書に有識者会議「これからの労働時間制度に関する検討会」の「結論を踏まえ」と記載されていることに懸念を抱く。

労働政策審議会(労政審)の議論の前に有識者会議で結論を出し、その結論を踏まえて労政審で議論するとなると、労政審の議論が形骸化しないか?

「結論を踏まえ」ではなく、有識者会議が報告書を作成して、その報告書を参考にして労政審で議論するというように書くべきではなかったのだろうか?

裁量労働制見直しに対象拡大も含んでいるのか?

それと、「裁量労働制を含む労働時間制度の見直し」との記載が曖昧で理解しがたいが、過去に安倍政権で提案され、また現在も経団連など経営側が要望している裁量労働制対象(適用)拡大は「裁量労働制を含む労働時間制度の見直し」の中に入っているのか明確に記載していない。

誰も何も言わないようが、「裁量労働制を含む労働時間制度の見直し」という記載は裁量労働制対象(適用)拡大「隠し」としか言いようがない。

なお、 経団連(日本経済団体連合会)が昨年(2021年)12月6日に公表した「当面の課題に関する考え方(2021年12月)」には次のように記載されている。

当面の課題に関する考え方(2021年12月)抜粋
働き手のエンゲージメント向上に着目し、働き方改革の深化を促すとともに、イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを加速する。その一環として、場所と時間にとらわれない働き方を推進すべく、テレワークを巡る人事評価・労務管理上の課題について検討するとともに、健康・福祉確保措置の徹底を前提とした裁量労働制の対象拡大等、自律的・主体的な働き方に適した新しい労働時間制度の実現を目指す。

厚生労働大臣諮問機関・労働政策審議会の形骸化

今回の内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議文書の裁量労働制見直しに関する記載が典型的な事例になるが(何の肩書も地位もない者が言っても書いても仕方ないことだが)厚生労働大臣の諮問機関・労働政策審議会の議論が形骸化していないだろうか?

労働政策審議会は、平成13年1月6日、厚生労働省設置法第6条第1項に基づき設置されました。本審議会においては、厚生労働省設置法第9条に基づき、厚生労働大臣等の諮問に応じて、労働政策に関する重要事項の調査審議を行います。また、本審議会は、労働政策に関する重要事項について、厚生労働大臣等に意見を述べることができます。

本審議会は、厚生労働大臣が任命する30名の委員(公益代表委員・労働者代表委員・使用者代表委員の各10名)で組織されています。委員の任期は2年とされ、再任することができます。

参考:総理大臣諮問機関・規制改革推進会議とは

内閣総理大臣諮問機関・規制改革推進会議の主な任務は「内閣総理大臣の諮問に応じ、経済社会の構造改革を進める上で必要な規制の在り方の改革に関する基本的事項を総合的に調査・審議すること」(内閣府サイト)と記載されている。

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