見出し画像

自分ひとりが世界から取り残されたと思ったら


他の人はどうなんだろうと時おり思いを馳せるのですが、私には自分が無用の長物に思える時間が定期的にやってきます。

その時間を擬人化して「彼」と呼んでおりますが、「彼」は私がすごく好きみたいで、今日のような朝から土砂降りの雨がざあざあ降る日などは、両手に真っ黒なバラの花束を抱えて満面の笑顔でやってきます。

ああそうかい、そんなに人の不調が嬉しいかい、とこちらも不機嫌顔で出迎えるのですが、ここまで付き合いが長いともう腐れ縁のだめな恋人みたいなもので、私は仏頂面のまま「彼」が持ってきた両手いっぱいの黒バラを受け取り、無言で花瓶にさして部屋の隅に飾って愛でるまでになりました。

こういうときは自衛策としてSNSを見ない、人と会わない、大自然の中へ行く、などの方策をとるのが良いのでしょうが、結局ただボーっとすることが何よりの癒しなのだとこの歳になってつくづく思い知るようになりました。

森田療法っていうんでしょうか、あえてあれこれ試みず、ただボーっとして自分の中からやる気が出てくるのをひたすら待つ。
単純ですが有効です。ことにこのご時世、なんとしてでもことをなさねばー、などとイキって無駄なエネルギーを使うよりも、今はただ生きているだけで御の字、くらいに思っていた方が気が楽です。

で、少し元気が出てきたら手を伸ばし、Twitterなどをダラダラみたりする。あれTwitterって不思議ですね、コロナで熱に浮かされていた時もあれだけは見れていました。あれは自分と外界をつなぐ最後の拠り所なのかもしれません。

そしてさらに元気が出てきたらお湯をはってお風呂に浸かったり、身体に悪いものでも構わないから食べたいものを食べてみる。
そんなことをしている私を見ているうちに「彼」は飽きてくるのでしょう、やおら席を立ち、「また来るぜ」と言い残してフラリと去っていくのです。

その後ろ姿を見送るうちにまたいつの間にか普通に動けている自分に気づき、行きつけの店などにしばらくぶりで顔を出すと、そこには同じように穴グラから出たばかりといった顔の人がいて、「お元気でしたか」「最悪です」「でしょうね。でも今は世界中そうですからどうかお気になさらず」といった、毒にも薬にもなりえない会話が淡々とかわされます。

無理しないで可能な限りマイペースにいきたいものです。







この記事が参加している募集

眠れない夜に

最後まで読んでいただき、ありがとうございます! 見ていただくだけでも嬉しいですが、スキ、コメント励みになります。 ご購入、サポートいただければさらにもっと嬉しいです!