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“バレたら最後”な緊張感が面白い! 潜入捜査映画5選

「バレるかも?」とハラハラして、「バレなかった〜!」とホッとする。刑事が犯罪組織に身分を隠して潜入する覆面捜査ものは、クライム・サスペンスの面白さが存分に味わえるジャンル。敵の前でも、まるで最初からその人物であるかのように振るまう彼らの度胸、大人なら是非身につけておきたいはず!?

『ディパーテッド』

製作年/2006年 製作・監督/マーティン・スコセッシ 
出演/レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、マーク・ウォールバーグ

警察とマフィアに潜入した男たちの交錯にハラハラ!
レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンの競演による覆面捜査もの。バイオレンス描写を得意とするマーティン・スコセッシ監督によるツボを押さえた演出で、アカデミー賞作品賞に輝いている。

ディカプリオ演じるビリーは警察から犯罪組織に、デイモン扮するコリンは逆にギャングから警察へと、それぞれ身分を偽って潜入することに。犯罪組織、警察と、どちらも内通者がいることに気づくが、人狼ゲームさながらに正体をつかむことができない。周囲を欺いて暮らすうちに、本当の自分を見失いそうになり、苦悩するビリーの姿は観ていて、心が痛むはず。

全編とおして緊迫感があるのだが、イチオシなのは2人が最接近する劇場のシーン。ビリーの仕掛けた罠と知らず、組織のボス、コステロとコリンが密会。後方で息を潜めるビリーは、立ち去るコリンを追いかけ路地裏を駆け抜ける。暗闇で、互いの存在を感じ取り、武器を構える……と、残念ながら、ここでのマッチアップはお預け。しかし、互いの身分がバレるかもしれない、というドキドキ感は存分に味わえる名場面だ。

『潜入者』

製作年/2016年 原作/ロバート・メイザー 監督/ブラッド・ファーマン 
出演/ブライアン・クランストン、ダイアン・クルーガー、ジョン・レグイザモ

覆面捜査官は家族との団らんの場でも油断できない!
レーガン政権期の米国と南米コロンビアとの間で繰り広げられた、1980年代の“麻薬戦争”。それを題材にした実録サスペンスが、こちらの作品。
ブライアン・クランストン演じる主人公ロバートは平凡な関税局員。麻薬の取り締まりのため、大胆にも資産家のふりをして南米の麻薬組織と接触することに。同僚役のダイアン・クルーガーとともにカップルを装って、結婚披露宴に麻薬組織の幹部たちを全員招待。そこで、一網打尽にする破天荒な作戦を実行しようとする。

本作で、潜入捜査を行うロバートは、家族持ち。そのため、仕事と家族の間で苦悩する姿が描かれている。ハイライトは、結婚記念日に夫婦でレストランへと訪れるシーン。運悪く麻薬組織の人間と鉢合わせてしまい、ロバートは、とっさに妻のことを秘書だとごまかす。さらに記念日のケーキを持ってきた店員に悪態をつき、なんとかその場をやり過ごすことに成功する。

ところが何も知らなかった妻はショックを受け、夫婦には大きな溝が。その後、同僚捜査官の気づかいもあり、麻薬組織は壊滅するも家庭は崩壊せずに済んだ。やはり、覆面捜査官は独身の方が向いている!?

『フェイク』

製作年/1997年 監督/マイク・ニューウェル 出演/アル・パチーノ、ジョニー・デップ

疑われまくりで気を緩めることができない!
ジョニー・デップがFBIのオトリ捜査官ジョー・ピストーネを熱演した実録ドラマ。イタリア系マフィアの男レフティをアル・パチーノが演じており、演技派俳優同士のがっぷり四つに組んだ共演が楽しめる。

ジョーは宝石鑑定士ドニー・ブラスコに扮して、マフィア組織の末端にいる男レフティと接触することに。やがて、ふたりは家族同然の親密な関係となっていく。レフティに信頼されていくドニーは、しだいに本来の自分であるジョーの生活を見失っていく。そして、妻や子どもたちの待つ自宅にほとんど帰らなくなってしまう……。

バレるかも? と思わせる場面は、潜入捜査中に知人にばったり遭遇する場面。このピンチを、ジョーは「このホモ野郎、俺に触るな!」と殴り飛ばすことで乗り切る。また、マイアミのボスを客船に招くものの、警察の手入れが入る場面ではレフティはドニーが潜入捜査官ではないか? と詰め寄る。最大のピンチが訪れるが、そこも上手く切り抜けることに成功する。ヒヤヒヤする場面の連続で、潜入捜査ものの醍醐味が味わえる1本だ。

『アンダーカヴァー 』

製作年/2007年 監督・脚本/ジェームズ・グレイ 
出演/ホワキン・フェニックス、マーク・ウォールバーグ、エヴァ・メンデス

刑事の兄が不良の弟に潜入捜査の協力させる!
『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスとマーク・ウォルバーグとの共演作。麻薬組織を撲滅しようとするエリート刑事役のマークと夜の世界で働く不良の弟役のホアキンとの兄弟の葛藤が描かれる。

麻薬捜査に協力することを拒んでいた弟ホワキンだが、兄に懇願されて盗聴器を隠し持って麻薬の精製工場を訪ねることに。ところが、緊張のあまりに汗をだくだくと流してしまい、麻薬組織から怪しまれてしまう。このあたりは「バレちゃうかも!?」と、観ているこちらも手に汗を握ってしまうシーンだ。素人が潜入捜査する際のたどたどしさをリアルに演じたホワキン。その演技は、さすがの一言。

警察の捜査に協力したために、ホワキンと恋人は麻薬組織から命を狙われてしまう。ビジネスの付き合いを優先するか、それとも家族の絆を守るか。そこの決断もハラハラさせられる。

『イースタン・プロミス』

製作年/2007年 監督/デビッド・クローネンバーグ 
出演/ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ、ヴァンサン・カッセル

完璧な覆面捜査官ぶりに脱帽!
潜入捜査もので、一風変わった作品がこちら。ヴィゴ・モーテンセン主演のクライムサスペンス。東欧系の10代の少女たちが薬漬けにされ、人身売買されているという衝撃的な実話をベースにしている。

舞台はロンドン。14歳の少女タチアナがドラッグストアで出産後、死亡。助産師のアンナは赤ん坊の家族を探すため、残された手帳を頼りにあるロシアンレストランを訪ねる。そこはロシアンマフィア“法の泥棒”のアジト。で、そこで運転手をしているのがヴィゴ演じるニコライだ。実はニコライはロシア連邦保安庁の潜入捜査官。死体にメモを貼り付けるなどして、組織の内情を報告していた。

一風変わっているというのは、潜入捜査官だと疑われる場面がないところ。それだけニコライの潜入ぶりがお見事というわけかも? では、ハラハラドキドキしないかといえば、そうではない。サウナでの全裸格闘シーンや、ロシアンマフィアの残虐な仕打ちは目を覆うばかり。特にボスの息子キリルは、どこでキレるのかわからない厄介な男。その男を手なずけるニコライは、やっぱり最強の覆面捜査官かも!?

文=長野辰次 text:Tatsuji Nagano
photo by AFLO

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