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新たな市場を創出?!ミレニアル世代から絶大な人気を誇るヨガウェア「ルルレモン」のマーケティング戦略に迫る。

久しぶりのnote。今日は"食"から少し離れて、ヨガウエアブランドのマーケティング戦略について書いてみた。理由は最近私がワークアウトにハマっているから。ワークアウト後にヘルシーなフードを食べるのが最近のマイブーム。

さて。今回フューチャーするのは、ヨガやメディテーション(瞑想)の人気が高いアメリカで、今ミレニアル世代から絶大な人気を誇っているヨガウェアブランド「Lululemon(ルルレモン)」

日本にも大阪と銀座に店舗が存在しているため、知っている人も多いのではないだろうか?

スポーツウェア市場は、アディダス、アンダーアーマーズ、ナイキなどのメジャーブランドが市場を占めていたが、ルルレモンはこれらの老舗ブランドを脅かす勢いで急速に成長している。

2008年に約2億7,000万ドルだったルルレモンの売上は、2018年には約26億4,900万ドルと、10年で約10倍の売上高に成長した。さらに、注目すべきは営業利益率である。2018年のルルレモンの営業利益率は約17%で、これはナイキの営業利益率12%よりも高くなっている。

出典:https://www.stockclip.net/companies/8484

どのようなマーケティング戦略を取ることで、ルルレモンはここまでの成長を遂げたのだろうか?

ルルレモンとは?

ルルレモンは1998年に、チップ・ウィルソンによってカナダのバンクーバーで誕生した。レディス向けのヨガパンツの販売からスタートしたルルレモン。質の高い商品とヨガブームが相まって、ヨガをライフスタイルに取り入れているヨギー(ヨガ愛好家)の支持を受け、人気ブランドへと成長した。

現在はレディス向けのヨガウェアのみならず、メンズ向けのスポーツウェアなども展開している。
「最高にシェイプな身体を維持するためにヨガをライフスタイルに取り入れている、コンドミニアムを所有する32歳の成功したビジネスウーマン」をブランドターゲットとしているだけあり、商品の価格帯はタイツが1枚約100ドル(約11,000円)と高めな値段設定である。

あまり知られていないが、実はルルレモンは2006年に日本で事業展開をしていた。しかし、経営資源をアメリカに集中させるため2008年に撤退。そして2018年に再上陸を果たし、現在は大阪と東京に店舗を展開している。

ルルレモンが取ったマーケティング戦略とは?

ルルレモンが支持されている理由。それは、質の良い機能性に優れた商品を提供していることは勿論、非常に優れたマーケティング・ブランディング戦略にある。

①新しい選択軸を与えることで、新たな市場を創出

マーケティング手法の1つに「新しい選択軸を与えることで、新たな市場を創出する」という手法が存在する。
例えば、アサヒ飲料の缶コーヒー「ワンダモーニングショット」

【出典】https://www.asahiinryo.co.jp/wonda/sp/

このコーヒーが発売されるまで、「コーヒーをいつ飲むか?」という選択軸は存在していなかった。そんな中、ワンダは「コーヒーを飲む時間」という新しい選択軸を与え、「朝専用のコーヒー」という新たな市場を創出し、当時缶コーヒー市場で5位に甘んじていたワンダを業界3位まで押し上げることに成功したのだ。

「スポーツウェア市場」で戦ったのでは、ナイキやアディダスのような老舗ブランドに太刀打ちできない。そう考えたルルレモンも、この手法を使用した。それは機能性を追求したスポーツウェアとファッション性を追求したストリートウェア、どちらも兼ね備えた「ファッションスポーツウェア」という市場を創出した。

【出典】https://www.instagram.com/lululemon/

アメリカでは、ジムに通っている人は大抵スポーツウェアで街中を歩き回っている。日本では、ジムに行くまでは通常の洋服を着ていて、ジムに到着してからロッカーで運動着に着替えるのが普通だが、アメリカではスポーツウェアを着たままジムに行き、運動後も汗をかいたウェアのまま自宅まで帰るのがスタンダードなのである。

そのため、アメリカの人々はスポーツウェアに「機能性」だけでなく「ファッション性」も求めていたのだ。ここに目をつけたルルレモンは「ファッション性のあるスポーツウェアか否か」という新しい選択軸を与えることで、老舗ブランドとの競争軸をずらし、「ファッションスポーツウェア」という新たな市場を創出することに成功したのだ。

②地元のアスリートをアンバサダーに任命し、コミュニティを育成

Adidasのカニエ・ウェスト、Pumaのリアーナなど、既存のスポーツウェアブランドはブランドアイコンに有名人を起用していた。

【出典】https://us.puma.com/en/us/home

しかし、ルルレモンは有名人ではなく地元のヨガインストラクター、トレーナー、アスリートなどを「アンバサダー」としてブランドアイコンに起用した。
彼らをアンバサダーに任命し、無料で商品を提供する代わりに、店で定期的に開催するヨガやランニンググループなどのイベントの講師を務めてもらった。

ちなみに私が参加したルルレモンのイベントでは、フィットネスジム「クロスフィット」で人気のトレーナーがサーキットトレーニングを指導してくれた。

このようにルルレモン各店舗で、アンバサダーを講師に招き、毎週何かしらのイベントを開催することで、顧客にルルレモンの世界観を体感させ、ブランドロイヤリティを高めさせているのだ。

イベントに参加することで顧客はアンバサダーや店員、あるいは他の参加者との絆を深めていき、各店舗でコミュニティが形成される。
誰もが知る有名人ではなく、地元で活躍する人をアンバサダーにするからこそ、このような顧客にとってより信頼性の高い、魅力的な関係を構築できたと言えるだろう。

③生活に溶け込んだSNS施策
ルルレモンのターゲットは25-35歳のフィットネスに関心を抱いている女性。彼女たちの興味をひくために、ルルレモンはSNSに注力している。Facebook、Twitter、Instagramは勿論のこと、Pinterest、You Tube、SpotifyなどのSNSにも取り組んでいる。一つ一つのSNSの質が非常に高く、人々のライフスタイルにうまく溶け込んでいる。
例えば、Spotify

ランニングしながら聞くのに適した曲、リラックスしたい時にピッタリの曲…。様々なシーンに応じたプレイリストが作られており、ファンを引き付けている。


また、You Tubeではヨガレッスンのコンテンツなどがあり、自宅でもユーザーがヨガを楽しめる仕組みを提供している。

提供しているのは、運動系のコンテンツだけではない。
2,8百万人のフォロワーを抱えるInstagramのストーリーには、「Fuel」というコンテンツがあり、ヘルシーな料理が紹介されている。リンクをクリックすると公式HPにとび、詳細なレシピを見ることができる。

【出典】https://shop.lululemon.com/


また、Pinterestには「hairspration(ヘアースタイル)」「summer vibes(夏をイメージしたシーン)」など様々なコンテンツが用意されている。「Sanctuary(聖域)」というカテゴリには、リラックスできるインテリアのアイデアなどを見ることができる。 


運動をする時間のみならず、生活全体で活用できるTips(コツやテクニック)を提供することで、生活者のライフスタイルに溶け込んだSNS施策を提供していると言えるだろう。

このような独自のマーケティング・ブランディング戦略で、ミレニアル世代から愛されるブランドになったルルレモン。
アメリカとは異なる生活習慣やカルチャーを持つ日本において、どのような戦略をとっていくのかに注目である。

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