ぼんやりと月を眺める。
まん丸の月は満面な笑みで、微笑んでいるように見える。
私も思わず笑って、忘れたい感情を滲ませる。
泣けば泣くほど、不思議と笑顔になって空を見上げるのが
こんなにも気持ちが良いなんて初めて知った。
昨日までの感情は地上へ残し空へと舞いあがりたい気持ちだ。
地上に残した感情の名前を知りたくて辞書を引いてみるんだけど
何が当てはまるのか分からなかった。
せめて答えだけでもわかったなら、心のざわつきも
少しは落ち着きそうなんだけどな。

映画なんてほとんど見なかった私が急に見たくなって
衝動的に映画を立て続けに見た。
世界観の違うものを選んだつもりだったけど
どれもが「生きる意味」を説いていたと私は感じた。

最初に見た映画はアクションもので
次から次へと展開する画面に言葉を失った。
そこにある人間模様が、まるで私の心の叫びのようで
見終わった時には、時間が柔らかく進んでいたことに気づいた。

見る前までは私の心は見えなくて、誰かの言いなりになっては
そんな風に泳がされている自分がそれでいいんだと
自ら望んでいると言い聞かせていたから。
でも今は、「自分らしく生きる」という言葉が浮かんでいる。
はみ出した考えはいつも淘汰され、後ろに座っている上司の目を気にし
会社に行って気づけば夜で、時計は進むんだって俯瞰していた私。

強さともろさが交互に来ては、私を支配していたものが
今日は夜風とともに吹き抜けていく
今の感情を忘れてしまうくらいなら
明日なんて来なくていいって叫びたい気分だ。

自分を変えるなんて簡単じゃないから、重責を受け入れて
居なくなってしまいたいって呟いては
またつまんない生活に戻っていた。
もう少し頑張ればって自分に魔法をかけて
私の価値観はおかしくなっていたんだと思う。

涙一粒だってでなかった私の心に、深い穴があいたままで
心を膨らませることが出来ず、コマのように捨てられないようにと
泣かないで頑張って、頑張って、頑張って・・・。
不安定な心のままだと、今日見た映画まで忘れてしまいそうで怖くなる。

泣きながら見た2本目は「一緒に逃げよう」って恋愛ものだった。
ただ疲れた日々を過ごす私にとって、とても新鮮な言葉で
笑って笑って、立ち止まっては笑い合えるあの二人の姿に感情移入した。

趣向を変えた3本目はミステリーものだった。
もうどうにもできない状況で主人公は誰を疑い、誰を信じるのか
疑心暗鬼になった彼に、傘をさしてあげたくなるほど
雨の中打たれる彼の姿は美しいと感じた。
それは見た目のことなのか、その心のことなのかは
もはやどうでもよかった。
私の中でこの感覚が、感情が、静かに溶けて消えていく様を
味わうことに意味があったんだと思う。

あっという間に時は過ぎる、また明日もすぐ来る
それでも今日感じたこの感情を忘れたくない。

ぼんやり眺める月は、相変わらずニコニコ笑っていて
私のこの昇華された気持ちでやっと、今までの感情が言葉をなしてきた。
きっと昨日までの感情に名前を付けるなら
「寂寥感せきりょうかん」

何をしても心が満たされない、心に穴が開いたような気持ち
満足することなく、充実感にあふれることもなく
ずっと喪失感や空虚感の中で生きていた事実が
月が消えてからもなお、私の心を震わせる。
この感情を私は美しいとさえ今は思える
知らない間に、ざわつきを落ち着かせていた。

あとがき
この詩は、誰かに縛られた人生を生きることを良しとしてきた彼女が、映画を通して自分の生き方を見つけ、見終わった後は彼女の今までの人生は寂寥感で胸がいっぱいだったんだとわかるお話です。
「物悲しい」という感情だけでは表現しきれない、寂しくてわびしい気持ち、心にぽっかり穴があいた感覚が、彼女は何かわからずいました。
映画を見て生き方を考えようと決意する彼女は、過去を寂寥感と表現し、最後はその感情すらも美しいと思えるほど彼女は腑に落ちたのです。
これでようやく自分の気持ちに気づき、前を見ることができるようになりました。

さぁ、私たちも「生きる」ことに目を向けて。

言葉の羅列から生まれるストーリー

無造作に無作為に言葉を羅列する
そのままの順番でストーリーを作る
今日はこの羅列↓↓↓