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一目ぼれモルガナイト

やってしまった。
1年のころからあこがれていた彼に初めて話しかけた言葉が

「さ、桜餅好きですか?」

人生最大にやらかしてしまった。
 
 
初めて彼を見かけたのは、入学式の日。
桜が優しい季節だった
式が終わり、私は大福やさんに行くからと母に言って
一人でゆっくり町並みを歩いていた
そしてバス停の近くの桜並木に彼はいた
桜を眺める目がモルガナイトのように
淡く優しく光って見えた
その瞬間、彼から目が離せなくなった
 
 
あれから1年、桜舞い散る4月。
今日は金曜日、学校帰りに少し寄り道をする
今年も楽しみにしていた、季節限定の桜餅。
路地裏にある何十年変わらない大福やさん。
桜の甘い香りと塩漬けにした桜の葉。
今日はおばあちゃんが一つおまけしてくれた
 
路地を出て左に曲がればバス停だ
るんるんでバス停へ向かう。
夕日と桜が私の食欲を増してくれる
 
バス停に向かうと
そこには彼が立っていた 
桜の木を見つめる彼は
とても優しくて、あたたかくてキレイだった
この日の彼の目も、モルガナイトのように
淡い淡い桜色
目をそらすことが出来ずに
私は確実に、見惚れていた
 
そんな私に気づいた彼が振り向く
桜がキラッと光った
 
 
私の唐突な質問に
「桜餅?えっと、嫌いじゃないかな(笑)」
そういって彼は笑っていた
話したことはないけど、自販機でお茶を買ってもらってベンチに座る
 
私の名前もきっと存在も知らない彼。
「えっと、名前は・・・」
「私、桃瀬です。2組の桃瀬です」
私は桜餅を渡す
 
「いただきます」
いつもより甘く感じる
桜の華やかな香りが
私の心の中に入ってくる
 
 
春の柔らかくて優しい風が私の長い前髪が揺らす
彼と目が合う
美しい目に思わずそらしてしまった
鳴りやまない鼓動と一瞬合った目に
 
呼吸を忘れた
 
その瞬間彼の周りには桜の花びらのようなものが
キラリと光り輝いているのが見えた
 
桜を見るたびに彼のあの目を思い出す
8年たった今でも彼はこの季節になると光り輝く笑顔で隣を歩いてくれる
 

お知らせ


このお話は彼女バージョンです
彼氏バージョンと併せてお楽しみいただけます
ぜひ一度読んでみてください
より深く二人の関係がわかってエモい気持ちになります♡


儚く美しい詩や物語が好きです★また明日も頑張ろって思えるようなものご用意しています♡ぜひご覧ください。いっしょに素敵な世界線へまいりましょう。