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幻想の鎖

私の頭の中は軽い脳震盪のように震えている。
見るものすべてをはねのける力があれば、世界を平等にできると信じていたけど、そう願い叫ぶ私をあなたはいとも簡単に突き放す。
「そんなのはキレイごとだ」
分かってる、わかってたけど面と向かって言われるとどうしようもなく立ち尽くすしかなかった自分に嫌気がさした。
「そんなこと思ったこともない」って言えれば良かったんだけど、自分でもキレイごとだとわかっていたから、だから信じた。世界を平等にできると、信じるしかなかった。
そんなやり取りを見ていた私の相方は鈍感だから直接的なことしか言わない。とても事務的だ。

「赤い血が出てるよ」それはそうだ、血は赤い。どうか今だけは黙っててほしかった。黙っていても口角が上がっている相方を羨ましくも思う。いつもより色が濃い血を見てため息が出る。どうしてこうなったんだっけ。複雑な3角関係のような立ち位置で困惑する。
個人的にはあなたの言うことを理解できる。ずっとあなたを見てきたし心の奥底では、私もそう思っているから。あなたはそれからは何も口にせずただただ月を見ていた。そんなあなたを私と相方は見つめる事しかできない。酷く頭が痛む、軽い脳震盪を起こしていたことを思い出す。長い沈黙が彼との最後の時間だと感じさせた。ここしかないと畳み掛ける。
「なんで敵になっちゃったの」
「それで本当にいいの」
「私のことはもうどうでもいいの」
たくさんの言葉を吐き出す。昇華しきれない言葉たちで時間を埋める。
「ずっと考えていた、君が言う事はすべて幻想的だと。そんな気がしている」
照らす光は青白く、まさに幻想的だった。その光を吸い込んであなたの気持ちに寄り添って、今までのことをすべて忘れてほしい、これもなかったことにしよう。あなたの香りがしたことで私は焦った、彼がもう行ってしまった現実に心は追い付かない。
だがそれもすぐに現実味を帯び、私は焦燥感に襲われる。何とか引き留められると思っていた過去の自分を悔やみたい。どうして行かせてしまったんだ、強制的にでもあの手を掴んでいれば。目の前の光景は、まるで暗い部屋でただ一人「ただ独り」なんだと実感させられるようであった。これは錯覚でまたいつものように嘘だよって帰ってきてよ。あなたが生きていてくれるから頑張れてこれたのに、敵になんてなりたくないよ。。。
突然降り始めた雨は私の涙の変りのように流れる血と涙のしずくを洗い流してくれる。
「本当にいいんですか」空気の読めない相方がまた直接的に聞いてきた。
「いいわけないじゃん」だけどもうこれで彼は本当に戻れない。この世界では、敵か味方しかいないから。今まで積み上げてきた実績も経験も人望も全て嘘だったかのように彼と一緒に消えてなくなった。
降り止んだ雨のあとに見える世界へ、私は願い事をする。
「どうか月の光よ、見るものすべてをはねのける力があれば、世界を平等にできますように。」
運命に繋がれていた鎖は彼が自ら外し、自分が選んだ道へ飛び込んだ。もし私に翼があれば、彼を力づくでも連れて帰るのに。消えていく彼の香りにまた理想だけで言葉を並べる。

あとがき
ヒーローも敵もそれぞれに持っている信念と正義。果たしてそれはどちらが勝者で敗者があるのか?!自分が信じているものと、自分が信じたいもの。それは洗脳か強制か自ら望むものなのか。

このお話は、ヒーローと敵という二極化された世界で生きる主人公と彼と空気の読めない相方の3人の物語です。
ヒーローも敵も住みやすい世界を求め理念と理想を追い求めた結果二極化された世界です。

3人は世界を守るヒーローとして戦っていました。しかし、彼はヒーローの在り方に疑問を抱きます。犠牲をだしてでも守り抜くものはあるのか?ある種洗脳のように戦うヒーローが滑稽に見えてきました。そしてついに主人公と彼の関係は敵と味方に分かれることで崩れ始めます。衝突から始まるケンカで、主人公は脳震盪を喰らうほどのパンチを受けます。そこから物語は始まります。
「見るものすべてをはねのける力」とは何なのか、それが何なのか。世界を平等にすることが正しいことなのか、平等とは何を持っていうのか。
本当は主人公も自らの信念に疑問を抱いています。絶望と喪失感に打ちのめされながらも、主人公は彼を引き留めようと奮闘します。しかし、彼は主人公を置いて旅立ってしまいます。
主人公が、自らの理想と失ったものに向き合う姿を描いています。

※イラストは主人公です。女性でした~
複雑な三角関係だ。
※「正義」をあなたの思念や理想と置き換えてもらえるといいかもしれない。あなたの正義を誰かに強要することは難しく、強制されるものでもない。でも、あなたの中にあっていいものが「正義」

何をもって正義とするのか、あなたの正義は誰かの正義ではない。
正義の押し付け合い?多様性?認め合う事?
この世にはびこる正義とは何でしょう。あなたは何を信じて生きている?

言葉の羅列から生まれるストーリー

無造作に無作為に言葉を羅列する
そのままの順番でストーリーを作る
今日はこの羅列↓↓↓

頭の中,軽い,跳ねのけて,平等,突き放す,思ったこともない,鈍感,直接的,赤い,どうか今だけ,口角,色が濃い,個人,月を見ていた,酷く,吐き出す,幻想的,気がして,照らす光,吸い込んで,寄り添って,今まで,香り,焦る,焦燥感,光景,暗い部屋,実感,錯覚,生きて,雫,戻れない,この世界では,積み上げて,月の光よ,繋がれた,選んだ道,翼,消えていく,並べて

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